2026年07月01日

ネコ・ログ #82

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  • というのも、吾輩は猫である──と名乗ってみたが、すでにこの名乗りは著作権とか版権とかがどうであるにしろ、ともかくいまでは 「マダム・ボヴァリーはわたしである」 というのと同じくらい有名なので、無名の自分が使うのは気後れする。それに第一、あれは名乗りではない。あっちは有名なくせに無名だからだ。こっちは無名であるにしろ、一応ちゃんと有名なのだ。名はノンチンコ、すなわち性別は雌で、オチンチンがないことから飼われ主がつけてくれたのだ。パリジェンヌふうの接頭辞とやまとなでしこふうの接尾辞とが、前後からうやうやしく男性をはさんで、いい名である。猫に名前をつけるのは厄介な仕事だ。休日のたわむれごとなんかじゃない、と例の元銀行員の英国詩人も書いているが、飼われ主も苦労したのだろう。ついでに同族のよしみで紹介しておけば、ドラ息子の名はクロシロ(毛の色が黒と白の単純な組み合わせ)、おばあちゃんはそれがそのまま実名である。
    柳瀬 尚紀『ノンセンソロギカ』


  • #730│ドミノ│飼い猫 ── ブルー・ゾーンの猫
    「ブルーゾーン」(The Blue Zones)は 「世界の長寿地域、イタリア・サルデーニャ島、 日本・沖縄、アメリカ・カリフォルニア州のロマリンダ、コスタリカ・ニコジャ半島、ギリシ ャ・イカリア島の5カ所」。著者のダン・ビュイトナーが世界の百歳人(センテナリアン)にインタヴューしたルポルタージュ『The Blue Zones 2nd Edition』(祥伝社 2022)を指すが、ここでは 「長寿ネコの棲む地域」 という意味ではなく、日暮れ時に世界が濃い青色に包まれる幻想的な自然現象 「ブルーモーメント」 のことである。石森章太郎の心霊異界コミック 「ブルー・ゾーン」(1968)や大島弓子の 「黄昏は逢魔の時間」(1979)をイメージしている。いかにも異界から魔物が出て来そうな時間帯ではないか。青く染まった街角で、薄緑色の目をした茶トラの目線の先が気になる。ドミノちゃんは何を見ているのでしょうか。

    #731│ゴト│飼い猫 ── あれはニャンだ?
    「空を見ろ! 鳥だ! 飛行機だ! いや、スーパーマンだ!」 その昔、人々が空を見上げて指差すのは鳥や飛行機ではなく、スーパーマンが定番だったが、昨今の主流はU.F.O.やドローン、ミサイルなどだろうか。三毛ネコが見ているのは民家の2階、女飼主が高鋏で前庭に伸びた枝葉を斬っていたからだろうか。ネコは動く対象に並々ならぬ興味を示す。それが風で動く半透明のゴミ袋や舞い上がる落ち葉であっても一心不乱に戯れついたりする。特に空を飛び交う鳥や蝶や蜂などの昆虫や羽虫は大好物だ。食料を得るための捕獲行動だけではなく、一人遊びをしているように見えなくもない。その姿は微笑ましくはあるが、一抹の寂しさも感じられる。わざわざ 「猫じゃらし」 を持参して、ノラ猫を遊ばせる女性もいた。警戒心が強くて、女飼主以外には懐かないゴトちゃんも、「猫じゃらし」 には食いつくかしら?

    #732│マイ│飼い猫? ── トラネコ様は愛くるしい
    真夜中に腹が減って目が覚めた。台所の戸棚を引っ掻き回していたら、瓶を蹴り倒して液体が零れ出し、横転した紙袋から白い粉が飛び出した。どうやら 「粉酢」(小麦粉と酢で 「こなす」)らしい。冷蔵庫の上に置いてあった焼きざましの鯵を味わい、ベランダに出て陰から放尿した。コンクリートに寝そべって秋の夜空を眺め、椅子に座って手足を舐めたり、爪を研いだり、大欠伸をしたり‥‥このままのんびりしていたいのだが、約束した原稿の締切日が迫っているので、書斎へ行って机の上に座って思案する。「ノンさま、お願いしますよ」 と頼んで、寝入ってしまった 「飼われ主」 の代わりに原稿を書くことになった拙猫ノンチンコが独白する柳瀬尚紀のエッセイは漱石の猫のパロディに留まらず、そこかしこに仕掛けられた言葉遊びが愉しい‥‥読み終わって散歩に出ると、どこか子猫の面影が残るマイちゃんが民家の前にいた。ピンと立った三角形の両耳も凛々しい茶トラだった。

    #733│ペタ│飼い猫 ── キャットジェニック
    白茶ネコのペタちゃんは写真映りが良いミス・フォトジェニックだ。視認ではなく足音の違い(ヒトの歩行には歩幅や早さなど、その人特有の相違があるという)で判別しているのか、ヒトよりもネコの方が早く気づく。どこからともなく、フンフンと鳴きながら近づいて来て、ゴロニャンと引っくり返る(お腹を撫でろというアピールだ)。ところが数週間前から、ペタちゃんの姿を見なくなった。まるで神隠しに遭ったみたいに、忽然と消えてしまったのだ。どうやら、飼主一家と一緒に新居へ連れて行ったらしい。この地域の集合住宅(築50数年?)は老朽化のために建て替えることになった。それに伴って住人たちが順次引っ越して行ったからだ。もう二度とペタちゃんに会えないのかと思うと切ない。もし転居先が近所ならば、再び出会える可能性もあるかもしれないけれど。

    #734│ミス│飼い猫 ── パトロールに出ようかな?
    解剖学者・養老孟司の愛猫まるで、その魅力が広く知られるようになったスコティッシュ・フォールドは両耳が折れている丸顔が愛らしく、ネコよりもフクロウを連想させる。天然なのかと思わせるほど無防備で人懐っこい性格とは裏腹に、「骨軟骨異形成症」 という先天性・遺伝性の骨・関節疾患がある。後ろ肢を前に投げ出す 「スコ座り」 も関節の痛みを緩和するためではないかと思われる。「インターナショナル・キャットケア」 の最高責任者を28年に渡って務めたクレア・ベサントもスコティッシュ・フォールドや短足のマンチカン、短頭種(鼻ペチャ)のペルシャなど、突然変異や異種交配によるブリーディングには否定的で、英国の猫血統登録団体 「GCCF」(Governing Council of the Cat Fancy)もスコティッシュ・フ ォールドを公認していない。ミスちゃんは家の中にいても外から呼びかけると、玄関のキャ ットドアから走り出て来たのに、最近外に出て来ないのは関節痛が原因なのかもしれない。

    #735│ゼロ│地域猫 ── 日向ぼっこ猫
    集会場の裏に臨時に設置されたゴミ置き場(粗大ゴミ、可燃ゴミ、不燃ゴミ)、そのオレンジ色の金網に寄り添うように白黒ネコが横たわって微睡んでいた。上半身は日影、下半身は日向というコントラストが眩い。常時は近寄ると一定の距離を保って遠ざかるのだが、この日は午睡で眠いのか、動作が緩慢で動き出す気配はない。この地域に建つ集合住宅(築50数年?)は老朽化のために建て替えることになった。首都直下の巨大地震が起きたら倒壊する危険が高い。住人たちは段階的に新居へと引っ越して行く。人懐っこい白茶ネコのペタちゃんも飼主に連れられて既に転居したのか、少し前から姿が見えなくなってしまった。飼い猫ではなかったのか、後に残されたゼロちゃんは放置されたままである。建て替えによる住人の引っ越し事情など、ネコに分かるはずもない詮無きことだが、その去就が心配される。

    #736│メタ│飼い猫 ── 天国ってあるのかな?
    ジョン・レノンは 「天国なんかない / 上にあるのは空だけ」(Imagine there's no Heaven / Above us only sky)と歌って、キリスト教徒から批判された。ところが 「地下に地獄はない」(No Hell below us)けれど、「生き地獄」 という言葉があるように、地上に 「地獄」 はあるらしい。ウクライナやイランの市民にとっては 「この世の地獄」 なのではないかと憂慮する。映画 「スター・ウォーズ」 よりもTVシリーズ 「スター・トレック」 の方が好きなトレッキーとして、この終わらない戦争は恥ずかしい。映画 「スタートレック ファーストコンタクト」(Star Trek: First Contact 1996)では 「ワープ航法(超光速航法)」 を自力で開発するまで公式な接触をしないという厳格なルール設定(Prime Directive)になっていた。もし人類が 「ワープ航法」 の開発に成功したとしても、地球上から戦争がなくならない限り、惑星連邦は野蛮な地球人とファースト・コンタクトはしないでしょうね。

    #737│レイ│飼い猫 ── 大きな耳とデカ目にゃん
    〈ネコ・ログ #80〉の中で 「キジトラは人懐っこい?」 と書いたが、うぐいす歌子の飼い猫キジネコ様は 「とても好戦的なお方」 で圧が強いというから、一概に人懐っこいとは言えないかもしれない。レイちゃんは大きな耳と目がチャームポイント。人懐っこくて、その気配がなくても呼びかければ姿を現わすことが多い。茶色に黒が混じった縞模様も写真映りが良くて嬉しくなる。先住猫のキジネコ様とクロネコ様に、《ある日保護された子猫。白い毛並みとハチワレ模様が特徴。恐れ知らずの暴君》のコネコ様を迎えた続編『今日もネコ様の圧が強い 2』(KADOKAWA 2026)はネコ様たちの凶暴性というか凄みが増しているようで心底怖い。うぐいす歌子の猫たちはどうしてこうも好戦的で凶暴なのだろうか。保護される前に虐待されて、人間を警戒するようにになったのだろうか。

    #738│ゼン│地域猫 ── Z**寺の茶黒ネコ
    栃木県・那須の長楽寺には7匹の猫(ミー子、ひーちゃん、まー君、シロ君、こーちゃん、たーくん、クロ)が暮らしている。2010年の夏、おかみさんが 「拾いものをしたから」と連絡すると、住職は 「拾いものは警察に届けなさい」 と言ったものの、腕に抱かれたミー子を見て、お寺で飼うことにしたという。一人っ子の娘おねえちゃん(当時小学5年生)の妹となった。翌年、ミー子が3匹の子猫(ひーちゃん、まー君、シロ君)を産んだ。住職の食事写真や動画をSNSに投稿した途端にバズって、来客も増えた。「やっぱりミー子は福の神」 「招き猫も驚くくらい、数多の福と一緒にやってきてくれた。それを思う度、私たちには感謝しかないんです」 と、おかみさんは話す(「NyAERA2023」 再掲)。Z**寺の境内には数匹の猫たちがいる。その多くは近寄ると足早に逃げてしまうが、茶黒ネコは一定の距離を保って後退りする。社前の植え込みの陰から、何とか寺ネコのゼンちゃんを撮ることが出来た。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する 「ネコ・カタログ」(cat-alog)の第82集です。サムネイルをクリックすると投稿した記事のネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコの見出しをクリックするとトップに戻ります。今までに730匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していたことに驚かされます。第82集の常連ネコはゴト、メタ、ミス、レイちゃん。TNRの功罪なのか、ノラ猫が1匹もいないのは良くも悪くも象徴的です。「W杯2026」(6・12~7・20)の真っ只中ですが、イマイチ盛り上がりません。北中米3カ国(アメリカ、カナダ、メキシコ)共催と関係があるのか、参加国が32から48チームに増えたことで、12グループ(A〜L)の1次リーグを勝ち上がってもベスト32(従来はベスト16)。決勝トーナメントを含めると、全104試合(従来は64試合)もある。水増ししたというか、間延びしているというか、些か緊張感に欠ける大会になってしまったように感じられます。

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    • 「NyAERA テラ盛り」(朝日新聞出版 2026)の 「7にゃんのてらねこ」 、『ノンセンソロギカ』(朝日出版社 1978)の 「こなす、着こなす、書きこなす」 から引用しました

    • オリジナル写真の縦横比は2:3ですが、サムネイルは3:4にトリミングしました

    • 「801匹ニャンちゃん大行進!」 のリンク・ボタンを「肉球アイコン」に変更しました
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    ノンセンソロギカ

    ノンセンソロギカ 擬態のテクスチュアリティ

    • 著者:柳瀬 尚紀
    • 出版社:朝日出版社
    • 発売日:1978/10/25
    • メディア:単行本
    • 目次:バベルの回廊──入れ子のボルヘス / 意味の無=意味──テクスチャーの変身 / 作者の不在──書物の解体 / あとがき


    The Blue Zones 2nd Edition

    The Blue Zones 2nd Edition

    • 著者:ダン・ビュイトナー(Dan Buettner)/ 荒川 雅志(訳・監修)/ 仙名 紀(訳)
    • 出版社:祥伝社
    • 発売日:2022/11/01
    • メディア:単行本
    • 目次:監修者の言葉 今こそこの本を読んでほしい理由 / はじめに 人生を変える旅に出よう / 長寿の真実とは?/ イタリア・サルデーニャ島 / 日本・沖縄 / アメリカ・ロマリンダ / 中米コスタリカ・ニコジャ半島 / ギリシャ・イカリア島 / 世界の百歳人(センテナリアン)に学ぶ健康と長寿の9つのルール / おわりに──どのような人生を選ぶか、選択はあなた次第


    STAR TREK VIII FIRST CONTACT

    STAR TREK VIII FIRST CONTACT

    • 出演:パトリック・スチュワート / ジョナサン・フレイクス / ブレント・スパイナー / ...
    • 監督:ジョナサン・フレイクス
    • 発売日:2019/07/24
    • メディア:Blu-ray
    • 内容:「新スター・トレック」 シリーズの映画化第2作は、最も人気の高い "機械生命体ボーグ" が登場、彼らは歴史を変えようと24世紀から21世紀へタイムスリップを試みる。エンタープライズ号もボーグの野望を阻止すべく後を追う‥‥。ライカー役のジョナサン・フレイクスの初監督作だ


    今日もネコ様の圧が強い 2

    今日もネコ様の圧が強い 2

    • 著者:うぐいす歌子
    • 出版社:KADOKAWA
    • 発売日:2026/01/15
    • メディア:コミック
    • 目次:本日のネコ様 / ネコ様たちの性格や好み / ネコ教の作法 / ネコ様vs人間 / コネコ様が来た / コネコ様を迎えるにあたって / ネコ様たちのお気に入りの寝床 / コネコ様おさわりマップ / ネコ様のお写真 / 長編描き下ろし コネコ様とクロネコ様の対面 / リアルネコ様の裏話 / ネコ様の日記 / あとがき


    NyAERA  テラ盛り 2026

    NyAERA テラ盛り 2026

    • 特集:猫とみんなの物語
    • 出版社:朝日新聞出版
    • 発売日: 2026/02/14
    • メディア:ムック(AERAムック)
    • 目次:NyAERAテラ盛り宣言 猫に尽くして、10周年みたいだよ / 農家カフェ 「農遊舎」 マツ、ウメ / 蛇窪神社 ウィル / ブックスB フク、ナナ、ダイキチ、ハナ / 松山庭園美術館 9匹の猫たち / うなぎ屋たむろ たまファミリー / 千木良駐在所 あんこ、パール / みんニャの写真館 / ROIROM 本多大夢 最近、猫っぽいと言われます / THE ALFEE 坂崎幸之助 猫たちと人生は続いていく / 坂上忍 猫のそば...
    posted by sknys at 00:04| 東京 ☀| Comment(0) | c a t a l o g | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする