
空飛ぶ円盤に乗って来た宇宙人(友人)から、お告げを受けたという美少女が私立十文字探偵事務所を訪れる。困った事件に巻き込まれる前に、十文字ゲンに相談しろというメッセージだった。ゲンと少女は彼女の故郷N県奥山村へ向かう。祖父の川越十衛門は東京嫌いで探偵の滞在を快く思っていない。美和が夜空を見上げると、金属音が聞こえ、光る空飛ぶ円盤が飛来する。裏山に着陸した円盤から宇宙人が降り立った。川越家先祖代々の家宝が囲炉裏の下(忍び返し)に隠されていた。3人を裏山へ誘い出した宇宙人が地下室で骨董品を物色していると、鎧武者を身に着けたゲンが立ち上がって、宇宙人の正体を名指しする。ポルター ・ガイストが探していたのは 「奥の細道」 を旅した時に一泊した民家に残した松尾芭蕉自筆の短冊だった。その短冊は川越家の柱に架かっていた。
・首なし島の花嫁(酔いどれ事件帳 その7)
新潟県佐渡が島から北へ数キロ行ったところにある 「首なし島」 は 「万来軒」 店主の故郷だった。従弟(妹の息子)の結婚式に社長の代理として出席することになった看板娘のタケとゲンが連絡船に乗って行く。船上で出合ったサングラスとマスクで顔を隠したモデルと連れ立ったカメラマンは "首なし地蔵" を背景にした写真を撮りに来たと話す。領主・田上角丸之守の悪政に一揆を起こした島民全員が首を斬られた。迎えに来た新郎・幸吉が斬った頭部を海の中に落としたという首きり岬へ案内する。婿が鬼(悪い領主)と戦って、花嫁を奪い返す。奥の部屋に隠した新婦を新郎が迎えに行くと、花嫁・洋子の首か消えていた。駐在に犯人と疑われた幸吉は洋子は別の男の児を妊娠していたと告白する。首無寺に宿泊しているカメラマンを訪ねたゲンとタケはモデルの首を斬って殺害して、洋子をモデルに成り済ませたトリックを暴く。東京で出会った2人は愛し合っていたが、洋子は親の決めた婚約者のいる島へ帰ってしまった。逃げ出した洋子が恋人にキスして、2人は首きり岬から落下する。
・鳴き竜のなくとき(酔いどれ事件帳 その8)
東京都下奥多摩、字、竜神村。竜神神社の欄干に彫られた竜は柏手を打つと鳴き、もう一度打つと涙を流す細工が施されていた。なぜか竜が鳴くと村長の頭に激痛が走る。バイクに2人乗りした男女が巨大な空飛ぶ竜に驚いて転倒し、逃げ込んだ森の中で白骨死体を発見する。「万来軒」 に来店した兵藤刑事が、「これから三億円事件の犯人を捕らまえに行く」、奥多摩の奥で昨日見つかった白骨が犯人らしいと、ラーメンを食べながらゲンとタケに息巻く。死体発見現場に臨場したゲンと十文字刑事はバイクを運転していた村長の息子から事情を聞く。神主が柏手を打つと村長の頭が割れるように痛む。捜査員が三億円が入っていたと思しきトランクを掘り出す。検死の結果、白骨体は3〜4年前に埋められたもので、死因は鈍器による脳底陥没だった。竜神村には神社の改修工事が終わり、美しい自然を大々的にPRして観光事業で村興ししたい神主と大企業の工場誘致を優先したい村長との確執があった。
巨大竜が空を翔け、三度竜が鳴いて村長に激しい頭痛が起きた。私財2億5千万を投げ打って神社を改修したという神主がゲンに神社に祀られている 「竜神さまの卵」 を開帳する。彫刻家・左珍五郎が欄干の鳴き竜に目に入れる(画竜点睛)。竜神村を丸ごと買収(土地売買契約)しに来た社長の乗ったヘリコプターが空飛ぶ巨大竜と衝突して空中爆発する。巨大竜は村の自然を破壊する村長グループの工場誘致計画に反対する青年団が竜神祭りで使う張りぼての竜をピアノ線で吊るしたパチモンだった。三億円強盗犯を殺害して金を奪ったことがゲンと十文字刑事にバレた神主は捕まる。村長の首の後ろに短針銃を打ち込み、竜の鳴き声に共鳴共振して頭痛を起こすように仕掛けた左珍五郎の正体はポルター・ガイストだった。白神三魔之介の狙いは5〜6千年前に形成された岩に埋め込まれたガラス玉 「竜神さまの卵」 だ った。古代人の見た竜の原型、ロケットに乗って地球を訪れた宇宙人の落としものなのか?
・雪の下(酔いどれ事件帳 その9)
東京に雪が降った朝、おタケの雪かきを命じられたゲンは6人の死体を発見する。十文字刑事は新年会で酔っ払って凍死したT大生ではないかと2人に報告する。本日休業の 「万来軒」 に依頼人が訪れた。三十万円の前金で身辺警護を依頼するが、その理由を聞かなければ引き受けるわけにはいかないとゲンに断られる。男は大田黒という表札のある屋敷に入った。後を尾けて来たゲンは2人の用心棒(ボディ・ガード)に、若旦那を脅している輩だと疑われて乱闘になる。大田黒邸から出て来た若旦那が自動車に拉致される。ルーフに飛び乗ったゲンが振り落とされる。田代精肉店の駐車場に停まった自動車。冷凍倉庫の中に連れ込まれた半裸の男を肉切り包丁を手にした店主と次男が脅していた。倉庫内に入って来たゲンに、田代親子は酔っ払った6人の学生たちを冷凍車に連れ込んで凍死させたと明かす。2人がゲンを斬りつけとリヴィング・マスクが破れて、鉄面が半分露わになった。内ゲバで長男を殴り殺された親子の復讐だった。
・野良犬(酔いどれ事件帳 その10)
「万来軒」 のゴミ箱を漁っていた野良犬クロを店主が追い払った。ゲンは購入したパンを投げて、手懐けようとするが驚いたクロは逃げ去る。途中で擦れ違った挙動不審の少年を尾行しるゲン。その後を尾ける野良公はゲンの置いたパンを咥えて隠れる。ゲンはジャックナイフで女性を恐喝(刺殺?)しようとした男を制止させて殴り、平手打ちする。殴り合いの前に自らリヴィング・マスクを脱ぎ、素顔(鉄面)を見せて、甘ったれのマザコン少年を改心させる。酔いどれ探偵はクロを飼うことにして、店主とタクを呆れされた。
・顔の中の顔、顔の下の顔(酔いどれ事件帳 その11)
お客にラヴレターをもらったと、おタケがゲンに逆ギレする。「万来軒」 の裏手でゲンがクロと戯れていると、アパートの2階から女性が顔を覗かせた。ゲンの屋台(おでん屋)に男女カップル客が来た。屋台を引いて帰る途中、クロが公園の砂場に埋もれていた女性の死体を発見した。屋台の客だった。ゲンはリードを引いたクロに、直前に目撃した公園から走り去った男の後を追わせる。擦れ違ったアパートの女性に吠えかかるクロ。翌朝アパートの窓を開けた女性に吠えるクロ。おタケが再びラヴレターをもらったと得意げに自慢する。物好きなやつの顔が見てみたいとゲンが言うと、店に来ていると答えた。送り主はポルター・ガイストだった。店から出た白神三魔之介の後をゲンが追う。出合った兵藤刑事はポルター・ガイストの変装っだった。本物の十文字刑事によると、被害者は男だったという。アパートに帰宅した女性を待っていた鉄面探偵が真相を聞き出す。嫉妬に狂い、恋人を刺殺して逃亡した男への復讐だった。女性は男装して、女装した男(ゲイボーイ)を誘い出して殺害したのだった。
・霊体殺人事件(酔いどれ事件帳 その12)
2月29日午後、ポルター・ガイストが再度ラヴレターを手渡すべく 「万来軒」 に参上する。おタケに変装したゲンは来店した兵藤刑事を疑うが意に反して本物だった。ゲン、おタケに変装したポルター・ガイスト、おタケ本人が鉢合わせして、店主、兵藤、おタケの3人が気絶した。白神三魔之介の挑発で、ゲンは "無理心中事件" として処理されていた事件ファイルを十文字刑事に見せてもらう。白神に教えられた青山のマンションの一室で待っていた車椅子でネコを抱く老婦人は自ら男女を殺したと自白する。密室で毒を飲んで死んだ男女。老婦人には完璧な不在証明(アリバイ)があった。複数の置き時計の前で1時間毎に10枚の写真を自撮りしていたのだ。事件ファイルによると、マンションAの105号室で境正二と三井千代子が青酸カリ入りのウイスキーを飲んで死んだ。近くのマンションBに住む篠原やえ子は両足が不自由で歩けない。ところが老婦人には動機があった。
二年前まで娘の夫だった正二は千代子と浮気をして離婚し、そのショックで娘が自殺してしまったという。白神のマンションを訪れたゲンは殺人事件の不在証明くずしゲームを仕掛けた三魔之介からヒントを与えられて、「キルリアン効果」〜エクトプラズムと 「二重存在」〜霊体離脱という心霊現象にミスレードされる。死亡推定時刻の7〜8時間前に老婦人がマンションAの105号室を訪れていたという目撃証言を十文字刑事が得た。光によって変化するはずのネコの目(瞳)が写真では変化していないことに気づいたゲンがアリバイを崩す。復讐の計画をしていた篠原やえ子は長い間歩けない振りをしていた。事件の起きた当日の昼、境正二のマンションを訪ねて、冷蔵庫かアイスボックスの氷に青酸カリを仕込んでおいたことを自白する。老婦人に変装した三魔之介が部屋に入って来て、「霊体」 である自分が真犯人だと主張するが手遅れだった。
・輪廻のヘビ(酔いどれ事件帳 その13)
ポルター・ガイスト(白神三魔之介)はチビの中学生だが、精巧な義手・義足を身に着け、その一部を超能力で動かすことで変幻自在の人物に変装出来る。屋台(おでん屋)の客に変装したポルター・ガイストがゲンを洋館に誘い出す。塀を飛び越えて屋敷内に侵入する三魔之介とゲン。リヴィング・マスクを脱いだ鉄面探偵が窓から部屋に入ると、ケースの中で夥しい蛇が飼われていた。半開きのドアの室内で、左腕を失った男が血を流して絶命していた。突然現われた義手に鉄面を掴まれたゲンが不審者の後を追う。ポルター・ガイストを捕まえるが、三魔之介の犯行ではなかった。ゲンは塀を乗り越えて逃走しようとする男と争う。ヘビ屋敷に忍び込んで腕を一本叩き切ってやろうとした男の仕業でもなかった。十数年前、南米の遺跡で蛇島譲と盗掘をしていた斎藤剣二は "おたから" を発見した。財宝に目が眩んで独り占めしようとした斎藤にスコップで殴打された。片腕を斬られたのは戯れに指の差した指輪 「輪廻のヘビ」 抜けなくなってしまったからだった。斎藤を襲って 「輪廻のヘビ」 を指に着けた片腕を食い千切ったのは檻から逃げ出した大蛇アナコンダだった。
・およげ!太・・・・・・子くん(酔いどれ事件帳 その14)
「風が吹けば桶屋が儲かる」‥‥核分裂反応が原子爆発になるような連鎖反応と同じ意味である。赤ん坊が泣き、パチンコで負けた亭主が妻に怒鳴る。苛立って外出した男が自転車に乗った駐在と鉢合わせし、腹いせに投げた石が警官の後頭部に当たる。気絶した警官から奪った拳銃が暴発してチンピラ男が死ぬ。爆死した男から拳銃を入手したイサムが銀行強盗し、自動車を奪って逃走するが警察隊に射殺された。クロを連れて散歩しているゲンが投げた鯛焼きが池の中に落ち、強盗犯が池に放り込んだトランク・ケースの中から無数の一万円札が水面に浮かぶ‥‥連鎖ドラマ事件。
・手配番号203号(酔いどれ事件帳 その15)
アレルギー性鼻炎の十文字刑事が屋台で息子ゲンと話している。ゲンが昼に捕まえた尻の青い空巣のこと。その昔、父親が刑事三課にいた頃に "五円玉" と呼んでいた空巣を必死で追っていた時のことを。ゲンは昼に捕まえたチンピラが見逃して欲しい方便としてリークした "五円玉" の情報に思い当たる。江戸川区小松川の倉庫で守衛をしていた "五円玉" が民家の門扉を抉じ開けようとしていた浩二を見咎める。空巣犯は父親を売ったのだ。小刀で息子を脅した手配番号203号は見せしめのために自分の左指4本を切り落とす。
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・妖怪(酔いどれ事件帳 最終回)
2月中旬の夜、博多と小倉でサイン会を終えた石森章太郎(わたし)は長崎名物のチャンポンと皿うどんが食いたくなって街に出た。酒を一杯飲みたくなって、日曜日も年中無休で開いている小さなスナックに入った。「ピーナッツ」 という暗号名で呼ばれる黒い金が動いた 「ロ ッキード事件」 が発覚して日本中が大騒ぎになっていた時のことだった。マンガ家は 「鉄仮面」 を読んでいるファンの娘と出合う。ゲンちゃんに恋人を作って欲しい、ラーメン屋の娘ではなく、「ハチカブリ姫」 が良いという。東京に遊びに来れば案内すると誘うが、酔っ払ったフーテン娘だと思っていた 「ハチカブリ姫」 は長崎から外へ出られない被爆二世だった。ポルター・ガイストが "黒いピーナッツ" を食った政府高官の名前が記されたアメリカの調査資料を盗み出そうとして地下室へ忍び込むと、建物の中の全員が眠らされていた。極秘資料を狙って侵入した 「日本を裏から操っている恐ろしい "力" を持った──邪悪な存在」 に先を越されて、金庫は荒らされた後だった。「ばけもの」 に敗れて負傷した白神がゲンの前に現われてリヴェンジを誓う。おタケに書置きを残してゲンも 「万来軒」 から姿を消す。
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- 「石ノ森章太郎萬画大全集 2-14・3-9」(角川書店 2006)をテクストに使いました。「本の通販ストア」 終了のため、萬画大全集版はデジタル大全(kindle)にリンクした
- 「鳴き竜のなくとき」 は名作 「龍神沼」(1961)のヴァリエーションでしょうか?

- 著者:石森 章太郎
- 出版社:角川書店
- 発売日:2006/05/31
- メディア:コミック
- 目次:鉄面探偵ゲン・地底大迷宮(連続殺人事件は密室から始まった / ポルターガイスト(騒霊)/ 大崩壊)/ 鉄面探偵ゲン(機怪人ポルター・ガイストと呪いの赤目 / 千手観音は夜歩く)

- 著者:石森 章太郎
- 出版社:角川書店
- 発売日:2006/05/31
- メディア:コミック
- 目次:一億年の牙 / ペット殺害事件 / 銭湯殺人事件 / UFOのくる里 / 首なし島の花嫁 / 鳴き竜のなくとき / イラストコレクション








