
ハンス・ライテン『ヨー・ファン・ゴッホ=ボンゲル 画家ゴッホを世界に広めた女性』
「ファン・ゴッホ家のコレクションからファン・ゴッホ美術館へ」 「フィンセントとテオ、フ ァン・ゴッホ兄弟のコレクション」 「フィンセント・ファン・ゴッホの絵画と素描」 「ヨー・ファン・ゴッホ=ボンゲルが売却した絵画」 「コレクションの充実 作品収集」 の5章のテーマ別に作品を展示。総出品数76点と少ないためか、各階(LBF〜2F)に 「家族がつないだ画家の夢」(イントロダクション) 「ファン・ゴッホ オランダからパリへ」 、「34歳 パリからアルルに居を移す」、「36歳 サン=レミ療養院に入る」、「ゴッホの最期 そして家族は‥‥」 というヴィデオ映像、「イマーシブ・コーナー」(2F)では幅14メートル(4×14×5m)、3DCG(8Kの10倍)のパノラマ 「没入体感型デジタルアート」(約4分)を放映していた。本展の目玉はポスターやチラシにもなっている〈画家としての自画像〉(Self-Portrait as a Painter 1888)だが、個人的には最後に展示されていた〈農家〉(Farmhouse 1890)のグリーン系の色彩と歪んだ家屋に魅了された。
読者も編集者も、無意識に 「傑作」 を描いてしまった作者自身さえも作品の凄さ、本当の価値が分からなかった(恥ずかしながら初読、再読しても分からず、三回読んで傑作だと確信した)。 「トーマの心臓」 には人間の内面が描かれている。少年マンガの主人公たちには内面がないと言われるが、星飛雄馬にも矢吹丈にも内面はあった。しかし、それは人間の不可避的で根原的な苦悩ではなかった。ユリスモール(ユーリ)の内面はラスコーリニコフのように善と悪、聖と俗、正と邪に分裂している。50年余を経て、「少女マンガ」 の範疇を超えたエポックメイキングな傑作であるという正当な評価を得たのである。ゴッホの絵に現代人の苦悩を見出したのは二度の世界大戦を体験した20世紀の人々だった。ヨーの積極的な啓蒙運動がなかったとしてもゴッホの評価は揺るぎないと思うが、世界各地の美術館で 「ゴッホ展」 が開催されるようなことにはならなかったかもしれない。口絵63点、本文図版69点、年譜、参考文献、人名・作品索引などを含む大著(A5判・688頁)で、活字も大きくて読みやすい。
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- 写真は 「イマーシブ・コーナー」(2F)で撮ったゴッホの〈灰色のフェルト帽の自画像〉(Self-Portrait with Grey Felt Hat 1887)です。本展には出品されていません

- アーティスト:フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh 1853-1890)
- 会場:東京都美術館
- 会期:2025/09/12~12/21
- 主催:東京都美術館 / NHK / NHKプロモーション / 東京新聞
- 概要:フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)の作品は、今日までどのように伝えられてきたのでしょうか。本展は、ファン・ゴッホ家が受け継いできたファミリー・コレクションに焦点を当てます。フィンセントの画業を支え、その大部分の作品を保管していた弟テオは兄の死の半年後に生涯を閉じ、テオの妻ヨーが膨大なコレクションを管理することとなります。ヨーは義兄の作品を世に出すことに人生を捧げ、作品を展覧会に貸し出し、販売し、膨大な手紙を整理して出版するなど、画家...

ヨー・ファン・ゴッホ=ボンゲル 画家ゴッホを世界に広めた女性
- 著者:ハンス・ライテン(Has Luijten)/ 川副 智子(訳)
- 出版社:NHK出版
- 発売日:2025/06/27
- メディア:単行本
- 目次:アムステルダムの少女 / 社会的地位のある中産階級ボンゲル家(1862~1888年)/ 美術界への仲間入り―ファン・ゴッホ家(1888~1891年)/ 屋根裏に絵がいっぱいある下宿屋の女主人(1891~1901年)/ 再婚とファン・ゴッホ作品の集中プロモーション(1901~1905年)/ 勢いづくファン・ゴッホ(1905~1912年)/ 社会民主主義と書簡集の出版に向けて(1912~1925年)/ 女性たちの...







