2025年10月11日

フィーライン・フィクション 22



  • 第二志望以下の大学の合格発表は平常心でいられたのだが、さすがに第一志望の合格発表になると、前日に体調を崩すくらいには緊張しており、本も手につかなかった。そんな時に、毒を以て毒を制すの精神で、奇天烈というか強烈なエネルギーを発する本ならこの緊張を相殺してくれるのではないかと思い、『百年の孤独』を手に取ったところ、見事にのめり込んで現実のことなど頭から吹っ飛んでしまった。それを読みながら電車に乗り、本郷キャンパスに向かう。東京駅から丸ノ内線に乗り、本郷三丁目で降りるはずが、頭の隅でまだ着かないなとは思っていたものの、気付くと終点の池袋に辿り着いていた。/ その頃家では、「もうキャンパスに着いた頃なのに連絡がない、落ちたんだ」 と両親が心を痛めていたらしいが、私はそんな親の心も知らず、反対方面の電車に乗ってまた『百年の孤独』を開いていた。今度こそ本郷三丁目で降りて、もう合格発表を見てきた受験生たちがぞろぞろと引き返してくる中を逆走するように進む間も、掲示板を見上げ、合格を確認する間も、『百年の孤独』は胸に抱えて、読みかけの箇所に指を挟んだままだった。
    川野 芽生「幻臭と幻獣」


  •                     *
    • トム(tomcat)は牡猫の名前です。日本語の 「タマ」 に近いかもしれません

    • この猫本も北田冴の『寂しい狂い猫』と同じように絶版になったのでしょうか?

    • 牡猫ピートの開く扉はドラえもんの 「どこでもドア」 のように、未来に通じている

    • 「私」 をシュールな夢幻世界へ誘った雄猫オネイロポンプは 「猫王」 なのかしら?

    • 埋葬された墓地で甦った牝猫トマシーナは古代エジプトの女神バステトの生まれ変わり

    • 連作の表題には小説や詩集のタイトルから採られた 「タマ」 という言葉が入っています

    • ジェーン・タビーが産んだ4匹の仔猫たちの背中には翼が生えていました

    • トム・ジョーンズ(毛皮の人)は去勢されてから、平和を愛する優猫になりました

    • 老嬢テレーズ(元祖猫好きの独身女?)とペルシャ巨猫の禁断・倒錯愛が始まった

    • SF、ファンタジー、ミステリ、ホラー、黒いユーモアなど、全17篇のニャンソロジー

    • 猫舌の男爵なのか、猫の男爵なのか 「本文」 が書かれていないので分かりません

    • 招き猫の挙げている手は右と左で意味が異なるという話から始まる「百鬼夜行」 番外編

    • 妹メリキャットの飼い猫ジョナスはネコらしく、自由気儘に生きています

    • エミリー・ザ・ストレンジと4匹の黒猫サバス、ニーチェー、マイルズ、ミステリー

    • ガミッチはハリー&ヘレン・ハンター夫妻に飼われているIQ160のスーパー仔猫にゃん

    • 1949年、NYマンハッタンを5カ月間、震撼させた連続絞殺魔〈猫〉の正体とは?

    • 中・短篇10作品(初訳4篇)を 「地上編」 と 「宇宙編」 に分けて収録した 「猫SF傑作選」

    • 数学教授ヴェリットは女子大生クラリーを連れ戻すために、黒猫と長い旅に出ます

    • 老夫婦の住む木造平屋建ての母屋の離れに、「私」 と飼い猫タマが引っ越して来ますが

    • 大麻栽培農場を経営する白猫は首を刎ねられて、何度も美女(若妻)に変身します

    • 漱石の 「猫」 よりも二倍面白い、ムル(自伝)と楽長クライスラー(反故)の二重小説

    • 英語で書かれた最初の小説には妖猫グリマルキン(猫王)が初登場します
                        *

    川野芽生の 「偏愛の20冊」 に倣って、〈猫ゆりすと〉の中から 「偏愛的猫小説22冊」 を選んでみました。ネコ被りしているのはシャーリイ・ジャクスンの『ずっとお城で暮らしてる』の1冊だけですが、ピンク・ドラゴン姫とは趣味趣向が似通っています。「同好の士」 ではないかと勝手に思ったりして‥‥。12年間(2012~2023)に発表した評論、書評、選書、往復書簡などを収録したエッセイ集『見晴らし台』(ステュディオ・パラボリカ 2025)には 「シャボン玉の中の宇宙について」(18冊)、「私が選ぶ国書刊行会の3冊」 「『奇病庭園』刊行記念選書フェア」(13冊)という選書リストも収録されています。猫本タイトルをクリックすると、解説文が別タブに表示されます。キャット・コピー(腰巻き)も添えました。 大濱普美子の 「猫の木のある庭」 は小説集『たけこのぞう』を改題した文庫版の表題作。京極夏彦の 「五徳猫」 は『百器徒然袋──風』、ケリー・リンクの 「白猫の離婚」 は『白猫、黒犬』に収録されています。前者は中篇というよりも単行本並みの分量(文庫版は259頁)。17世紀フランスの風刺童話をホラーに改変した後者の結末は切れ味鋭く、読者に深く刺さります。

                        *
    • 「猫は宇宙で丸くなる」 「猫の街から世界を夢見る」 を追加しました(2025・10・30)
                        *



    見晴らし台

    見晴らし台

    • 著者:川野 芽生
    • 出版社:ステュディオ・パラボリカ
    • 発売日:2025/04/21
    • メディア:単行本
    • 目次:季節のはじまり / 短歌について / 本について / 暴力と抵抗 / 対話篇 / あとがき


    白猫、黒犬

    白猫、黒犬

    • 著者:ケリー・リンク(Kelly Link)/ 金子 ゆき子(訳)
    • 出版社:集英社
    • 発売日: 2024/10/25
    • メディア:単行本
    • 目次:白猫の離婚 / 地下のプリンス・ハット / 白い道 / 恐怖を知らなかった少女 / 粉砕と回復のゲーム / 貴婦人と狐 / スキンダーのヴェール / 謝辞 / 訳者あとがき


    ずっとお城で暮らしてる

    ずっとお城で暮らしてる

    • 著者:シャーリィ・ジャクスン(Shirley Jackson)/ 市田 泉(訳)
    • 出版社:東京創元社
    • 発売日:2007/08/25
    • メディア:文庫(創元推理文庫)
    • 内容:あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。ほかの家族が殺されたこの屋敷で、姉のコニーと暮らしている‥‥。悪意に満ちた外界に背を向け、空想が彩る閉じた世界で過ごす幸せな日々。しかし従兄チャールズの来訪が、美しく病んだ世界に大きな変化をもたらそうとしていた。"魔女" と呼ばれた女流作家が、超自然的要素を排し、少女の視線から人間心理に潜む邪悪を描いた傑作


    猫の木のある庭

    猫の木のある庭

    • 著者:大濱 普美子
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:2023/07/06
    • メディア:文庫(河出文庫)
    • 目次:猫の木のある庭 / フラオ・ローゼンバウムの靴 / 盂蘭盆会 / 浴槽稀譚 / 水面 / たけこのぞう / 文庫本あとがき / 解説・金井 美恵子


    タマや

    タマや 新装版

    • 著者:金井 美恵子
    • 出版社:講談社
    • 発売日:2025/02/14
    • メディア:文庫本(講談社文庫 か 10-6)
    • 目次:タマや / 賜物 / アマンダ・アンダーソンの写真 / 漂泊の魂 / たまゆら / 薬玉 / 解説・武藤 康史
    posted by sknys at 00:22| 東京 ☀| Comment(2) | b o o k s | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする