2026年05月11日

ピッチフォーク・スコア


2026年1月、米音楽メディア 「Pitchfork」 はサブスクリプション・サーヴィスを開始した。この有料サブスク(月額5ドル)に登録することで、読者はレコードの評価(10点満点)やレヴューへのコメントなどの投稿が可能になる。この機会に 「Pitchfork」 はどのような基準でアルバム(トラック、リイシュー)を評価しているかを具体的に開示した(How to Rate Albums Using Pitchfork Scores)。「辛口」 の音楽レヴュー・サイトだと思っていたけれど、彼らの職場では 「6.8点、良いけど最高ではない」 という格言があるという。意外にも6点台(6.0~6.9)は及第点の 「良質なレコード」 だった(5つ星評価の★★★に相当する)。8.2点以上のアルバムは 「Best New Music」(Best New Album、Best New Track、Best New Reissue)に認定されて、赤い矢印がアルバム・カヴァの右上に表示される。9点台の 「Best New Album」 は年に数枚、10点満点は10年に1枚という稀少盤。「Pitchfork」 の評価点と評価基準に、その一例として挙げたアルバムの一部レヴューや一言コメントを添えた。

                    *

  • 10Fetch The Bolt Cutters (Epic 2020) Fiona Apple

  • 10


  • 傑作、史上最高のアルバムの1つ(A masterpiece, one of the best albums of all time)。今後何年も、何らかのかたちで文化的、審美的に重要な意義を持ち続けるでしょう

  • カニエ・ウェスト(Kanye West)の5thアルバム《My Beautiful Dark Twisted Fantasy》(Def Jam 2010)以来、10年振りの10点満点!‥‥次は2030年でしょうか?



  • 9.1 – 9.9Diamond Jebilee (Realistik Studios 2024) Cindy Lee

  • 9.1


  • 記念碑的、歴史的な傑作(A monument, an instant classic)。時代を先取りし、超越したサウンドで、不朽の名作となった。これを契機に、新たなジャンルが生まれる可能性さえある

  • 「2024年ベスト・アルバム」 第1位に輝いた音源が2025年2月にフ ィジカル・リリース(3LP・2CD)した。シンディ・リー(Cindy Lee)はカナダ人ミュージシャン(ex-Women)、パトリック・フレーゲル(Patrick Flegel)の女装プロジェクト



  • 8.6 – 9.0Getting Killed (Partisan 2025) Geese

  • 9.0


  • 力強い声明(A major statement)、音楽の好みを問わず、時間とエネルギーを費やす価値がある。ジャンルを越え、新たな地平を切り開く、完璧で意図的な芸術作品。そのジャンル、その時代、ア ーティストのキャリアに欠かせない存在としてオーラを放っている


  • トランペットを吹きながら、銃口を向けるEmily Green(ギター)のハレーション・カヴァが禍々しく、ワイルドなヴォーカルとパーカッシヴなグルーヴが不穏な緊張感を強いる


  •    Bleeds (Dead Oceans 2025) Wednesday

  • 8.7


    カーリー・ハーツマン(Karly Hartzman)と6年間の恋愛関係を解消したMJ・レンダーマン(MJ Lenderman)は今後レコーディングに参加するが、ツアーには帯同しないという。カミラ・ムリナルチク(Kamila Mlynarczyk)が描いた妖怪イラストはキモ可愛い



  •    LUX (Columbia 2025) Rosalia

  • 8.6


  • スペイン・カタルーニャのSSWロサリア(Rosalia)の4thアルバムは全18曲・60分。「4つの楽章(Mov)に編成した、英語、スペイン、ウクライナ、日本、中国、イタリア、ラテン語など13の言語で歌われるオーケストラ・ポップ」



  • 8.0 – 8.5A Danger To Ourselves (Rvng Intl. 2025) Lucrecia Dalt

  • 8.5


  • 必聴盤(Essential listening)。今年最高のアルバムの1つ。卓越した技巧、あるいは崇高なものに触れ、時代精神を感じ、ジャンルの枠を超え、大きなリスクを冒しながらも達成している

  • 邪悪な魔女みたいに挑発的なアルバム・カヴァはコロナ禍にリリースしたイングア・イグノタ(Lingua Ignota)の 「真珠マスク」 やゾラ・ジーザス(Zola Jesus)の 「チョコまみれ」 を思い出させる



  •    Nested In Tangles (Fire Talk 2025) Hannah Frances

  • 8.0


  • 米SSWハンナ・フランシス(Hannah Frances)の6thアルバム。オープン・チューニング・ギター、ポリリズム、不協和音、ヴォーカルが幾層にも重なり合ったアヴァン・プログレ・フォーク?



  •    choke enough (Because 2025) Oklou

  • 8.0


  • オーケールー(Marylou Maynie)は仏ポワティエ生まれのSSW、プロデューサー、DJ。《E-Girlの美学で、エンヤ(Enya)をアップデート。世界で最も魅力的なサイボーグに違いない》



  • 7.6 – 7.9Imaginal Disk (Mom+Pop 2024) Magdalena Bay

  • 7.7


  • 優れたレコード(Excellent record)。強くお薦めする。同ジャンルの 「最高峰」。捨て曲が1つもない

  • マグダレーナ・ベイ(Magdalena Bay)はLAを拠点に活動するマイカ・テネンバウム(Mica Tenenbaum)とマシュー・ルーウィン(Matthew Lewin)のシンセポップ・デュオ。マイカは2ndアルバムで架空キャラ(True)を演じている



  • 7.0 – 7.5Animaru(Bayonet 2025)Mei Semones

  • 7.5


  • とても良質なレコード(Very good record)。一聴を薦める。退屈な瞬間は殆どなく、楽しい時間を過ごせる。安全策をとっている部分もあるが、全てが非常に上手く行っている。リスクを冒している部分もあるが、全てが完璧に成功しているわけではない

  • デビュー・アルバムのタイトルが 「Animal」 のローマ字綴りになってるように、〈Dangomushi / ダンゴムシ〉〈Tora Moyo / 虎模様〉など、曲名や歌詞にも英語と日本語が入り混じっている


  •    Noble And Godlike In Ruin(Joyful Noise 2025)Mei Semones

  • 7.2


  • グレッグ・ソーニア(Greg Saunier)曰く、「低予算でDIY制作したフランケンシュタイン。繊細で、拒絶され 、知性があり、人間性を奪われた人造人間」。メンバー4人の顔を縫い合わせたコラージュ・カヴァ 「ディアフーシュタイン」(Deerhoofstein)を制作したのはサトミ・マツザキ(Satomi Matsuzaki)



  • 6.6 – 6.9HIT ME HARD AND SOFT (Darkroom 2024) Billie Eilish

  • 6.8


  • 良質なレコード(Good record)だが、幾つかの問題点もある。バンドやジャンルに興味があるのなら、聴く価値はある。序盤は勢いがあるものの、終盤に少し失速する。大した成果を生んでいない曲もあるが、傑出した瞬間も幾つかある

  • 前2作に引き続き、兄フィニアス(Finneas O'Connell)がプロデ ュースした3rdアルバム。Z世代のアイコンは三歩進んで二歩下がり、扉を潜って深青の海中に落ちました


  • 6.0 – 6.5So Close To What (RCA 2025) Tate McRae

  • 6.0


  • かなり良いが、最高とは言い難い(Pretty good, not great)。避けられない問題点もあるけれど興味深い。バンドやジャンルのファンなら大いに楽しめるだろう

  • 直ぐに魅惑的なサビへ行くシングル〈Sports car〉は気に入っているけれど、MVは悪趣味の極みではないかしら?



  • 5.6 – 5.9The Life Of A Showgirl (Republic 2025) Taylor Swift

  • 5.9


  • 普通のレコード(Decent record)。良い点もあるが、幾つかの大きな問題点が全体的な印象を損ねている

  • テイラー・スウィフト(Taylor Swift)のことが大好きなロブ・シ ェフィールド(Rob Sheffield)は 「2025年ベスト・アルバム」 の第3位に挙げているけれど‥‥



  • 5.0 – 5.5Born To Die (Interscope 2012) Lana Del Rey

  • 5.5


  • あまり良くはない(Not very good)けれど、完全な失敗作というわけではない

  • 「サッドコア」 のメジャー・デビュー・アルバム。《リズ・フェア ー (Liz Phair)の言葉を借りれば、望むもの全てを手に入れたとしても、まだ不幸ならば問題はあなた自身にあるのだ》



  • 4.0 – 4.9The Best Of / The Best Of [Special Edition] (Parlophone 2008) Radiohead

  • 4.0


  • かなり悪い(Pretty bad)

  • インディーズ移籍後、旧メジャー・レーベル(EMI)主導でリリースされた 「バンドの意図に反した、中途半端で不必要なベスト盤」



  • 3.0 – 3.9The Deconstruction (E Works / PIAS 2018) Eels

  • 3.0


  • 本当に悪い(Really bad)。無能で思慮に欠ける

  • 《イールズ(Eels)の12枚目のアルバム、マーク・エヴェレット(Mark Everett)は相変わらず自己嫌悪と幼稚な韻律を明確な理由もなく何度も繰り返している》



  • 2.0 – 2.9Rush! (Epic 2023) Måneskin

  • 2.0


  • 酷い(Terrible)

  • 《あらゆるレヴェルで酷い。ヴォーカルは耳障り、歌詞は想像力に欠け、音楽は単調。音量を上げれば上げるほど、さらに悪く聴こえるロック・アルバム》



  • 1.0 – 1.9Lateralus (Volcano 2001) Tool

  • 1.9


  • 酷い、音楽界や世界における何か大きな問題の兆候を示している(Terrible and symptomatic of some kind of larger problem in music or the world.)

  • 《エリック・パートリッジ著『アンダーワールド辞典』(NTC / コンテンポラリー・パブリッシング 1998)は19世紀のストリート・スラングを集めた古英語辞書で、「pitch the fork」 という慣用句を 「哀れな話を語る」(tell a pitiful tale)と定義している》



  • 0.0 – 0.9NYC Ghosts & Flowers (Geffen 2000) Sonic Youth

  • 0.0


  • 聴く価値なし(Worthless)

  • 「歴史的な低評価:音楽史においても稀に見る 「0.0点」 を獲得したアルバムとして知られており、Pitchforkがこの点数を付けた数少ない作品の1つです」(Google AI)


                        *
    • 中村とうよう氏もMichael Jackson《Thriller》(Epic 1982)に 「0点」 を付けました
    • 「10点満点」 なのに、「101-point scale」(101点刻みのスケール)と英語表記されているのは0.0から10.0まで、全部で101通りの評価点があるからです(Google AI)

    • 上位12枚(6.6 – 10)と最下位(0.0)のアルバム(CD)は自腹で購入しました^^;

    ラベル:music Pitchfork
    posted by sknys at 00:07| 東京 ☁| Comment(0) | m u s i c | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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