2026年03月11日

折々のねことば 21



  • 折々のねことば sknys 201

    ちょっとした楽しみを味わい尽くそうとする意地汚さ、喉をゴロゴロ鳴らしたり、舌舐めずりしたりするのが、彼女は大嫌いだった。
    ジャン・コクトー


  • 『恐るべきこどもたち』を再読した。新訳ということもあるが、虚ろな表情を浮かべた少女がソファ・ベッドで子猫を抱いている 「カヴァ写真」(Jamie Casper)に惹かれたからだ。学生時代に読んだっきりなので、冒頭の雪合戦以外はウロ覚え。エリザベートとポール姉弟の家に飼い猫がいたのかどうかも記憶にない。表紙には猫が写っているし、猫好きのコクトーのことだから、もしかして?‥‥と期待した。結論から先に言うと、作中にネコは1匹も、比喩表現を除いて登場しない。文庫版(2025)は空前のネコブームに当て込んだ 「偽ネコノミクス」(羊頭狗肉ならぬ猫頭狗肉?)ではないか。ダルジュロスの支配圏を抜け出したポールの性格の弱さを非難するエリザベートの描写はネコっぽいけれど。
    2026・2・22


  • 折々のねことば sknys 202

    おばあさんはね、生き物としても、ちょっと猫的なところがあって、こわいような、優しいような、妖しいようなところがあります。
    田村 セツコ


  • 2023年の暮れ、一時的に預かったものの、その家族の事情が変わって一緒に暮らすことになった黒猫にゃん太郎との共生生活。87歳、一人暮らし、住居兼仕事場のワンルーム(ゴミ屋敷)‥‥にゃん太との毎日や今までに出会った猫たちのことを飾らない言葉で綴る。おデブなのに本棚の上に飛び乗る凄い運動能力、朝昼晩のブラッシング、外へ出たがる、仕事の邪魔をする、温もりとストレス解消、猫との会話、猫と犬の違いなど、猫の行動や習性、猫との暮らしを過不足なく的確に描写し、自己観察も衒いなく率直に語る。カラー口絵(8頁)、本文にイラストと写真を掲載、巻末に 「猫と楽しく暮らす47の方法」 を収録。現役イラストレーターによる書き下ろし猫エッセイ『おばあさんと猫』から。
    2026・3・6


  • 折々のねことば sknys 203

    おやまあ なんと
    ゆめのなかで みいちゃんは
    とってもつよそうな おすもうさんに。
    町田 尚子


  • みいちゃんは早起きして、眠気覚ましに四股を踏む。パン生地を捏ねて丸めて、オーブンに入れる。パンが焼けるまで一休み。みいちゃんは夢の中で横綱になって土俵入り。小さな縞猫3兄弟と相撲を取る。転がっても痛くないのはパンで出来た土俵だから。モデルは知人の飼っている 「どすこい系」 の三毛猫。「知人がケーキやパンの教室を開いていたので、どすこい系の猫とパンがくっついたら面白いと思ったのがきっかけ」 だった。パンと相撲は相性が良い。横綱の綱は捻りパン、エプロンは化粧回し、土俵の俵もバゲットに似ている。「いつかは相撲取りになりたい」 とは全く思っていない猫だったが、編集者の意向で 「横綱が夢」 という設定に軌道修正。絵本『どすこいみいちゃんパンやさん』から。
    2026・2・21


  • 折々のねことば sknys 204

    どこにでも入ってゆける猫だから爪あとほどの夜の隙間へ
    佐藤 弓生


  • 町田尚子が愛読していたという佐藤弓生の歌集からイメージして描いた歌画集。巻頭右頁に〈名もなき、だなんて言っても誰も名を知らないだけの花やゆうれい〉、左頁に首からカメラを下げ、黄色い襟幕を巻いて、紺色のスモックを着たネコが右前肢で一輪を持っている画 「花や幽霊」(2025)が添えられている。必ずしもネコを詠んだ短歌というわけではないのに、おかっぱ少女と耳先カットしたネコたちの猫画集になっているところが 「隙あらば猫」(座右の銘)の画家らしい。〈耳欠けてこのあとどこへゆくでしょうむかしの切符みたいな猫は〉〈くらやみがくろねこを産む春だから毛糸の玉のように満月〉など、84首の歌と描き下ろし22点を含む全65点の画を掲載した『歌画集 花やゆうれい』から。
    2026・2・21


  • 折々のねことば sknys 205

    ある秘密をお教えしましょう。「猫はいつもモフモフの着ぐるみの内ポケットに赤い手帳を忍ばせもち歩いていて、不愉快なことがあるとそこにメモしている」 のです。
    クロード・ベアタ


  • 仏動物行動学・獣医精神医学者は 「猫の視点に立って猫の世界を探検する」。歴代の飼い猫との暮らし、診察した猫たちの行動障害‥‥うつ病、不安症、恐怖症、双極性気分変調症、解離性症候群、HSHA(過敏性多動性症候群)と治療法を具体的に語り、猫のウェルビーイングを目指す。被食者として身を守り、捕食者として狩りをする 「猫の二面性を理解すること」 「調和のとれた生活環境」 など、5つの鍵を読者に授け、「体罰は決して猫のためになりません!」 という獣医師のマントラを唱える。全5章の扉にヴィクトル・ユーゴ ー、ジャン・コクトー、ダーウィン、イヨネスコ、コレットのエピグラフを掲げて、見出しに映画やTVドラマなどのタイトルを付ける遊び心も愉しい。『猫の狂気』から。
    2026・2・21


  • 折々のねことば sknys 206

    ネコが大型サイズじゃなくてよかった、という古いジョークがある。続きは 「もしそうだ ったら飼い主を食べてしまうから」
    ジョナサン・B・ロソス


  • アフリカヤマネコから進化したものの、今でも 「準家畜」(ヒトへの 「片利共生生物」)のイエネコ(Felis catus)とノネコ(ノラネコ)。突然変異や異種交配で生まれた鼻ペチャのペルシャ、お喋りサイアミーズ、デカ猫メインクーン、活発なベンガルなど、多様な品種。人為淘汰と遺伝子工学による進化。三日月刀のような牙を持つサーベルイエネコの誕生までを夢想する。飼い猫のジェーンとウィンストン姉弟にキャットトラッカー(GPS装置)とクリッターカム(ネコカメラ)を装着して行動と生態をチェック。事故や感染のリスクの少ない室内飼いを目論みながら、外に出たがる愛猫ネルソンに根負けして、iPhoneで見守る日々。米進化生物学者によるネコ学『ネコはどうしてニャアと鳴くの?』から。
    2026・2・21


  • 折々のねことば sknys 207

    ハリーは、テイラーの飼い猫の名にちなんだ 「オリヴィア」 という素晴らしい曲も書いている(ちなみにハリーの姉の猫もオリヴィアだ)。
    ロブ・シェフィールド


  • 「ポール死亡説」 がファン神話の一部、都市伝説の1つだったことからも、ポップミュージ ックのファンが解釈好きの集団であることが分かる。テイラー・スウィフトがハリー・スタイルズのことを歌った《 「スタイル」 を書いてヒットさせると、ワン・ダイレクションは彼女のことを歌った 「パーフェクト」 でそれに応えた(メロディーは 「スタイル」 のパクリだ)》。重要なのはファン・コミュニティの集合的な力で曲の意味が決まること。隠れた暗号メッセージを仕込むポップアーティストの 「素晴らしい例がテイラー・スウィフトで、歌詞のところどころを大文字にし、曲がひそかに意味することを綴っている」 という。Rolling Stone誌コラムニストのエッセイ『ドリーミング・ザ・ビートルズ”』から。
    2026・1・17


  • 折々のねことば sknys 208

    「ホントだねえ。この雲の案配じゃあ、半刻もしないうちに、雪が降ってくるよ」
    宮部 みゆき


  • 神田三島町の袋物屋三島屋の次男・富次郎は二代目聞き手。お文が語ったのは17歳の時に瘧(熱病)に罹って顔の左半分が痺れる後遺症に傷心し、縁談も壊れて失意の余り首吊り自殺しようとした孫娘に語った祖母の「変調百物語」、嫁いだ家の舅姑と夫、「祖父親子三人の悪口」 と 「懲らしめ」 だった。縁談話に辟易したおぶんは両親と兄夫婦と相談して、柳川村の地主の許へ、行儀見習いの名目で身を隠す。隠居夫婦の隠居所に集まって来る猫たちに名前をつけて世話をする。ある冬の朝、勝手口から空模様を仰ぎながら口にした独り言に、「まるで島帰りの刺青みたい」 な黒い縞の輪っかが右の前脚に2つある猫シマっこが話しかける。「丑の刻参り」 を想わせる猫神様(化け猫)の復讐譚 「猫の刻参り」 から。
    2026・3・1


  • 折々のねことば sknys 209

    とても好戦的なお方。お触りはほぼ不可能。活発なご性格。高いところに登ったり、物を壊したりするのがお仕事
    うぐいす歌子


  • SNSでバズった猫マンガ 「キジネコ様」 が描き下ろし(70頁)を加えて単行本になった。同居カップル、金之助とスミレの飼い猫2匹が2人に毒を吐く。クロネコ様は《お顔は怖いが、本当は少々臆病。おやつが好きすぎる。物静かで、キジネコ様とは喧嘩しがち。部屋は別々に暮らしている。元野良猫さんで、人間の家には来たばかり》。美大で日本画を学んだというモフモフした 「和テイスト」(洋猫も和猫に見える?)はヒグチユウコや町田尚子、石黒亜矢子などの猫画家にはない強み。手描きだと思われるが、同じ絵を拡大・トリミングして再利用(手抜き?)しているので、デジタル技術も併用しているようだ。元海上自衛官という異色のイラストレーター・漫画家の『今日もネコ様の圧が強い』から。
    2026・3・6


  • 折々のねことば sknys 210

    自分の行動を説明できないことがある。
    二階に素早く駆け上がれば駆け上がるほど、駆け上がった訳を忘れがち。
    スージー・ベッカー


  • 「毎日おんなじものを着たって大丈夫」 「眠ることをバカにしてはいけない」‥‥愛猫ビッキーと一緒に暮らして得た処世訓は人間への痛烈な猫パンチ。それは猫のように自由気儘に生きること。谷川俊太郎も 「訳者まえがき」 で《私たちが猫から学ぶのは自分勝手に生きる方法です。自分勝手に生きて許されるのにはどうすればいいのか、猫はそれを教えてくれます。簡単です。ただ純粋に無目的に自分勝手していればいいのです。権力や富や名誉や愛や正義を追求してはいけません。考えたり反省したりするのも禁物、過去も未来もなくただ一瞬一瞬をしたいようにする、それが秘訣です》と綴っている。米マサチューセ ッツ在住の作家兼イラストレーターの絵本『大事なことはみーんな猫に教わった』から。
    2026・3・6

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    〈折々のねことば〉は朝日新聞朝刊(月曜〜金曜日)に連載中のコラム 「折々のことば」(鷲田清一)のネコ版パロディ。『恐るべきこどもたち』(新潮社 2025)の中に 「彼はなにひとつ見逃さない用心深い猫になった」 という比喩表現が出て来る。『猫の狂気』(山と溪谷社 2025)の 「第2章 縄張りと苦痛」 は《私は猫が好きだ。なぜなら彼らは少しずつ、愛するわが家の目に見える魂となってゆくからである》というコクトーのエピグラフを掲げている。「猫の刻参り」(新潮社 2025)の中で、猫のチャミは《人の女子も猫どもも、愛でられながら恐れられる。人の女子は血の穢れを忌まれ、猫どもは化生のものであると忌まれる。罪も咎も、女子も猫どもの上にはないというのに》と、おぶんの肩の上で囁く。テイラー・スウ ィフト好きのロブ・シェフィールドも『ドリーミング・ザ・ビートルズ』(白水社 2025)の端々に、隠れた暗号メッセージをしこたま仕込んでいる。『大事なことはみーんな猫に教わった』(径書房 2020)は飛鳥新社(1991)、小学館文庫(1997)の復刻版です。

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    大事なことはみーんな猫に教わった

    大事なことはみーんな猫に教わった

    • 著者:スージー・ベッカー(Suzy Becker)/ 谷川 俊太郎(訳)
    • 出版社:径書房
    • Date: 2020/07/21
    • メディア:絵本
    • 内容:谷川俊太郎さんの名訳で贈るベストセラー絵本。大切な人へのプレゼントにもぴったりな、かわいいハードカバー(全96頁オール4色)で新装復刊! ソフトに。クールに。神秘的に。日当たりのいい場所を、すべて知っておくべし。この本はひょっとしたら、あなたの人生を変えるかもしれません
    posted by sknys at 00:04| 東京 ☀| Comment(0) | c a t s c r a d l e | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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