2026年03月06日

FAVORITE BOOKS 27

  • ネコは天才(日経ナショナル ジオグラフィック 2026)ナオミ・バー533


  • 「ネコ全史」(2023)に続くナショジオの猫ムック。ジョナサン・ロソス(インタヴュー)やジョン・ブラッドショー(引用)の読者には目新しい発見が少なくて物足りないかもしれないが、掲載された写真に目を瞠る。著者は2匹の保護猫ベアとローを飼っている。ベアは 「万有引力の法則を試す」 のが大好きなローの上を行く。ほぼ毎朝、「時計付きラジオのスイッチを入れて、私を起こす」 のだ。《どうして足で顔を叩いて起こしてやる必要があるの? 目覚まし時計を鳴らせばいいのよ》‥‥「The Genius Of Cats」(原題)に偽りなし。「NyAERA」(AERAムック 2026)の好敵手



  • おそろし 三島屋変調百物語事始(角川書店 2012)宮部 みゆき532


  • 川崎宿の旅籠〈丸千〉の一人娘おちか(17歳)は叔父夫婦の営む江戸の袋物屋 「三島屋」 に行儀見習いの女中として奉公に出た。ある日、伊兵衛夫婦が急用で外出することになり、姪のおちかが主人に代わって予定されていた来客の応対をすることになった。「黒白の間」 の庭に咲く曼珠沙華に怖れ慄く松田屋藤兵衛(藤吉)が建具職人の長兄・吉蔵の起こした忌まわしい殺人事件について話し出す。帰宅後、姪から藤吉の語った怪異譚を聞いた主人は口入れ屋の灯庵が斡旋した客たちの語る不思議な話の聞き手役をおちかに命じる。「曼珠沙華」 「凶宅」 「邪恋」 「魔鏡」 「家鳴り」 を収録



  • 変身ヒーロー誕生(河出書房新社 2026)石ノ森 章太郎531


  • 「仮面ライダー」 「変身忍者 嵐」 など、「変身ヒーロー」 10作品の第1話をコレクションした文庫オリジナル・アンソロジー。東映が企画、石ノ森はキャラクター設定とデザイン。原作マンガを少年誌に連載した 「メディアミックスの先駆的な作品だが、その多くはテレビ版とは様相を異にする」(序)。サイクロン号がないと本郷猛は変身出来ない、ハヤテが嵐に殆ど変身しなくなる、「キカイダー」 のペン入れは全てスタッフが描き、石ノ森は下描きだけした(解説)。ロボット刑事Kや十文字元など、変身しないヒーローもいるけれど、神楽生がいないのは画竜点睛を欠かないか?



  • 今日もネコ様の圧が強い 2(KADOKAWA 2026)うぐいす歌子530


  • 元海上自衛官という異色のイラストレーター・漫画家による猫マンガ第2弾。同居カップル、金之助とスミレ家の飼い猫キジネコ様とクロネコ様に《ある日保護された子猫。白い毛並みとハチワレ模様が特徴。恐れ知らずの暴君》のコネコ様を迎えて、凶暴性というか凄みが増しているようで心底怖い。同じ絵を拡大・トリミングして、使い回す手法を踏襲。《「人間を描くのが上手な人は世にたくさんいるから、私が描かなくてもいいだろう」 と避け続けてきたツケを、頑張って払っています》(あとがき)と吐露している。描き下ろし 「コネコ様とクロネコ様の対面」(12頁)を併録



  • 重箱のすみから(筑摩書房 2026)金井 美恵子529


  • PR誌 「ちくま」(2020-2025)に隔月連載されていたエッセイ集。『重箱のすみ』(講談社 1998)の続編を想わせる表題だが、令和版 「目白雑録(日々のあれこれ)」 である。著者が感じた些細な違和感から切り抜いておいた新聞や雑誌の記事やインタヴューなどを引用して、その隠された本質を暴き出す。コロナ下(あるいは禍)、東京五輪、新国立競技場(曲げわっぱ弁当箱)への言及も多い。「控える、予言、言葉が痩せた、耳が痛い、馬鹿、ボロ、まずい」 などの言葉に感じた違和感も辛辣に批評する。装丁は姉・金井久美子、表紙(装画)は駒井哲郎《時間の玩具》(1970)



  • 萩尾望都スケッチ画集 l 「ポーの一族」 と幻想世界(新潮社 2025) 萩尾 望都528


  • スケッチブックとクロッキーブックに描かれているが、プロット、キャラクター造形、セリフ、ネーム(コマ割り)なども詳細に書き込まれているので、「創作ノート」 に近い。「ポーの一族」 、カラー・イラスト画、「ビアンカ」 「10月の少女たち」 「ゴールデンライラック」 「戯曲 半神」 「イグアナの娘」 「王妃マルゴ」 など、約20作品から抜粋。デビュー前から50余年分のスケッチブックは200冊に及ぶという。巻末インタヴュー 「"出発点" としてのスケッチブック」 で、《「ポーの一族」 新シリーズ、死ぬまでに描き終えられるといいな‥‥》と語っている。「索引・著者コメント」 付き



  • 昨日の肉は今日の豆(河出書房新社 2025)皆川 博子527


  • その刊行が遅延していた最新短篇集。「PART 1」 は中間小説誌に発表された作品12篇。「牧神の午後あるいは陥穽と振り子」(2018)はマラルメの詩とポーの小説をタイトルにして、横光利一の 「日輪」 を作中に引用している。「PART 2」 は詩、俳句、歌詞など、書き下ろしアンソロジーやムック、ネット媒体に発表された多様な作品15篇。表題作 「昨日の肉は今日の豆」(2019)は高齢者の肉体が豆化する奇病(感染症)が蔓延する近未来を描いたパンデミック(コロナ禍)以前の作品。書き下ろし短篇 「ソーニ ャ 序曲」 は新作長編『ジンタルス RED AMBER 風配図 II』のスピンオフ



  • 恐るべきこどもたち(新潮社 2025)ジャン・コクトー526


  • 虚ろな表情を浮かべた少女がソファ ・ベッドで子猫を抱いている新訳の 「カヴァ写真」 に惹かれて再読した。学生時代に読んだっきりなので、冒頭の雪合戦以外はウロ覚え。エリザベートとポール姉弟の家に飼い猫がいたのかどうかも記憶にない。表紙に猫が写っているし、猫好きのコクトーのことだから、もしかしてと期待した。結論から先に言うと、作中に猫は1匹も、比喩表現を除いて登場しない。文庫版は空前のネコブームに当て込んだ 「偽ネコノミクス」 ではないか。ダルジュロスの支配圏を抜け出したポールの性格の弱さを非難するエリザベートの描写はネコっぽいけれど



  • 猫の狂気(山と溪谷社 2025)クロード・ベアタ 525


  • 動物行動学・獣医精神医学者が 「猫の視点に立って猫の世界を探検する」。歴代の飼い猫との暮らしや診察した猫たちの行動障害‥‥うつ病、不安症 、双極性気分変調症、解離性症候群、HSHA(過敏性多動性症候群)と治療法を具体的に語り、猫のウェルビーイングを目指す。被食者として身を守り、捕食者として狩りをする 「猫の二面性を理解すること」 「調和のとれた生活環境」 など、5つの鍵を読者に授け、「体罰は決して猫のためになりません!」 という獣医師のマントラを唱える。全5章にエピグラフを掲げ、見出しに映画やTVドラマ、ヒット曲のタイトルを付ける構成も洒落ている



  • おばあさんと猫(興陽館 2025)田村 セツコ524


  • 現役イラストレーターによる書き下ろし猫エッセイ。2023年の暮れに一時的に預かったものの、その家族の事情が変わって一緒に暮らすことにな った黒猫にゃん太郎との共生が始まった。87歳、一人暮らし、住居兼仕事場のワンルーム(ゴミ屋敷)‥‥にゃん太との毎日や今までに出会った猫たちのことを飾らない言葉で綴る。本棚の上に飛び乗る凄い運動能力、朝昼晩のブラッシング、外へ出たがる、仕事の邪魔をする、温もりとストレス解消など、猫の行動や習性、猫との暮らしを的確に描写。カラー口絵(8頁)、本文にイラストと写真、巻末に 「猫と楽しく暮らす47の方法」



  • 歌画集 花やゆうれい (ほるぷ出版 2025)佐藤 弓生 / 町田 尚子523


  • 町田尚子が愛読していたという佐藤弓生の歌集からイメージして描いた画集。巻頭右頁の〈名もなき、だなんて言っても誰も名を知らないだけの花やゆうれい〉の左頁に、首からカメラを下げ、黄色いマフラーを巻き、紺色のスモックを着たネコが前肢で一輪を持っている絵 「花や幽霊」(2025)が添えられている。必ずしもネコを詠んだ短歌というわけではないのに、耳先カットしたネコたちとおかっぱ少女の猫画集になっているところが 「隙あらば猫」(座右の銘)の画家らしい。描き下ろし22点を含む全65点の絵画と84首の短歌を掲載。ノンブルなしの大型本(B5判)



  • どすこいみいちゃんパンやさん(ほるぷ出版 2023)町田 尚子522


  • 「猫のパン屋さん」 という絵本ならありそうだが、店主が 「女力士」 というのは前代未聞ではないか。三毛猫のみいちゃんは早起きして、眠気覚ましに四股を踏む。パン生地を捏ねて丸めて、オーブンに入れる。パンが焼けるまで一休み。みいちゃんは夢の中で横綱になって土俵入り。小さな縞猫3兄弟と相撲を取る。転がっても痛くないのはパンで出来た土俵だから‥‥みいちゃんのモデルは知人の飼っている 「どすこい系」 の三毛猫。「知人がケーキやパンの教室を開いていたので、どすこい系の猫とパンがくっついたら面白いと思ったのがきっかけ」 だったという



  • ネコはどうしてニャアと鳴くの?(化学同人 2025)ジョナサン・B・ロソス521


  • トカゲの研究で知られる進化生物学者によるネコ学。「モダン・キャットのパラドックス」 から 「ネコの未来」 まで、全20章でネコの進化を論じる。アフリカヤマネコから進化したものの、今でも 「準家畜」(ヒトへの 「片利共生生物」)のイエネコ(Felis catus)とノネコ。突然変異や異種交配で生まれた鼻ペチャのペルシャ、お喋りサイアミーズ、活発なベンガル、デカ猫メインクーンなどの多様な品種。人為淘汰と遺伝子工学による進化。三日月刀のような牙を持つサーベルイエネコの誕生までを夢想する。原題 「The Cat's Meow」、副題 「How Cats Evolved the Savanna Your Sofa」


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    ラベル:Favorites books
    posted by sknys at 00:01| 東京 ☁| Comment(0) | f a v o r i t e s | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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