b 私のベスト 3(2026-01-03)best- 猫にご用心(日本印刷出版 2025)ウィリアム・ボールドウィン
- 石の扉(国書刊行会 2025)レオノーラ・キャリントン
- 人形のアルファベット(河出書房新社 2025)カミラ・グルドーヴァ
1. 英語で書かれた最初の小説は単なる化け猫物語ではなく、又聞きの伝聞という何重もの〈入れ子構造〉になっている。猫王 「グリマルキンが死んだ」 と猫たちが人語を喋るのだ。
2. 中・短篇集の表題作は夢と神話と魔術を大釜で煮詰めたようなシュルレアリスム小説。孤児ザカリアスが 「石の扉」 を開けて、地下の洞窟に閉じ込められている女性を解放する。
3. カナダ出身、英スコットランド・エディンバラ在住の作家は黒いミシンに取り憑かれている。ミシンのフレームに金色のペンキで 「ナイチンゲール」 という社名を書き入れる仕事をしている 「わたし」。ミシンを改造した幻灯機が屋根裏部屋の壁に幻影(ピエロ、天使、ミスター・マグノリア)を映し出すアガタ。フローレンス(ミシン)に恋をした8本足のクモ男。
b 人喰いワニとギュスターヴくん(2026-01-10)art絵本
『ギュスターヴくん』は《きみは ネコなの? ヘビなの? タコなの?/ んー ネコかな》というワニとギュスターヴくんの会話から始まる。ギュスターヴくんは猫頭・蛇手・蛸足(6本)のクリーチャー(怪物)。自画像を描いた本を下に向けて振ると、9匹のコピー・キャットがポタポタ落ちて来た。絵に描いたものを本から外に出せるという唯一の武器を持っているのだ。画家ヒグチユウコ自身が自己投影されたキメラ・キャットらしい。その名前の由来は 「東アフリカで300人も殺したといわれる伝説のワニ『ギュスターヴ』からとったんじゃないか」 「何百人も人を食べたワニってかっこいいな」 って思って、決めたんじゃないかと語っている(
「きみが生まれた日」 朝日新聞 2023・1・18)。だからといって、ギュスターヴくんもワニも獰猛な動物として描かれているわけではない。
『クロコダイル路地』の主人公ロレンス・テンプルは自分を獰猛なワニのイメージに重ねている。なぜワニなのか?‥‥それは皆川博子先生がマンディアルグの短篇 「ポムレー路地」 に小説の着想を得たからである。
b ビートルズを夢見て(2026-01-17)music『ドリーミング・ザ・ビートルズ』(白水社 2025)は米Rolling Stone誌のコラムニスト、ロブ・シェフィールドのエッセイ。筋金入りのビートルマニアらしく、「ディア・プルーデンス(1968年)」 「ジョージの内面の神秘」 「リンゴでいることの重要性」 「トゥモロー・ネバ ー・ノウズ(1966年)」 「俺を目覚めさせてくれ、死んだ男よ」 「ポールは僕たちの苦悩を測る概念」 「シルヴァー・ホース(1981年)」 など全36のテーマで、アルバムや曲、4人のキャラクターを掘り下げるばかりか、解散後のアルバムや音楽活動もフォローしている。〈I Am the Walrus〉の歌詞 「ググーグジューブ」(Goo goo goo joob) が『フィネガンズ・ウェイク』のモジリだったり、〈My Love〉はジョージの〈Somthing〉に嫉妬したマッカ(ポールの愛称)の最悪曲だとか、新たな発見や意見も散見される。「暗号メッセージ」 が文中の端々に、ゲーム・アイテムのように仕込まれているので、ニヤリとすることも多い。 ポップミュ ージックのファンは 「解釈好きの集団」 らしい。ハンター・デイヴィスの伝記『ビートルズ』(草思社 1987)などを読んでおくと、愉しさが倍増すること間違いなし〔次項へ続く〕。
b ポール死亡説(2026-01-24)music承前。〈Strawberry Fields Forever〉のアウトロで、「僕はポールを埋葬した」(I buried Paul)と聴こえるジョンの言葉が本当は 「クランベリーソース」(cranberry sauce)だったとか、〈Grass Onion〉の 「セイウチはポールだった」(The walrus was Paul)という歌詞などが有名だが、〈I Am The Walrus〉の 「ググーグジューブ」(Goo goo goo joob)という謎の呪文は卵男(ハンプティ・ダンプティ)が塀から落ちる(ハードボイルドではない生卵は割れる)直前に発する言葉 「眸魍亡霊」(googoo goosth)のモジリだという。ロブ・シ ェフィールドもテイラー・スウィフトやジョンのように、隠れた 「暗号メッセージ」 を
『ドリ ーミング・ザ・ビートルズ』の本文中にしこたま仕込んでいる。たとえば 「ポールはバンが来るのを待ちながら路上で死んだ」 という文章は 「コーンフレークの上に座って、バンが来るのを待っている」(Sitting on a cornflake / Waiting for the van to come)という歌詞のモジリだ。取材でジョンの家にいたハンター・デイヴィスが 「男」(man)を 「バン」(van)と聞き間違えたのを気に入ったジョンが歌詞を変えたというエピソードが隠されているのだ。
b オメガの悲劇?(2026-01-31)books『オメガ城の惨劇』(講談社 2022)は番外編という位置づけだったが、文庫化された際に
『ω城の惨劇』(2025)と改題されて、Gシリーズ後期三部作の完結編にスライディングしたという(児童向けのミステリーランド・シリーズの1冊として書き下ろされた綾辻行人の
『びっくり館の殺人』(2006)が〈館シリーズ〉第8作に昇格された過去があった)。しかし、どう考えても、このホームスチールはアウト(筋違い)だと思う。そもそもGシリーズ後期三部作
『χ(カイ)の悲劇』と
『ψ(プサイ)の悲劇』はエラリイ・クイーンへのオマージュとして想定されたミステリだったので、『Xの悲劇』と『Yの悲劇』を読んでいる人には最初から犯人は 「ネタバレ」(あり、なし、などと得意げに書いているレヴュアーはネタ本を読んでないことがバレバレで恥ずかしい?)だったのだ。つまり『ω城の惨劇』がGシリーズ後期三部作の最終作なのかどうかの判断は『Zの悲劇』へのオマージュになっているかどうかです。もし、そうでないのなら、森博嗣が 「ωの悲劇」 を自ら反故にしたということになる。
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- 週末(土曜日)コラム(sknys-lab)の1カ月分を纏めて公開しました(2026-01-26)
- 「ポール死亡説」(2026-01-24)は 「ビートルズを夢見て」(2026-01-17)の後半です
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本の雑誌 2026年1月 雪だるま餅つき号(No.511)
- 特集:本の雑誌が選ぶ2025年度ベスト10
- 出版社:本の雑誌社
- 発売日:2025/12/11
- メディア:雑誌
- 内容:さあ、今年も年間ベスト10の季節がやってきた! というわけで、「本の雑誌」 1月特大号は、年に一度のベスト10特集号。本の雑誌が選んだ2025年度ノンジャンルのベスト10に、鏡明のSFベスト10、池上冬樹のミステリーベスト10、三田主水の時代小説ベスト10、佐久間文子の現代文学ベスト10、栗下直也のノンフィクションベスト10、そして高頭佐和子のエンターテインメントベスト10が並ぶ、...

猫にご用心
- 著者:ウィリアム・ボールドウィン(William Baldwin)他 / 大久保 ゆう(編・訳)
- 出版社:日本印刷出版
- 発売日:2025/03/28
- メディア:単行本(soyogo books))
- 目次:まえがき / 猫にご用心(1553年)/ 猫の王様 伝承編「猫の王様」の噂を伝える偽作書簡の抜粋(1780年頃)/ 詩篇 猫の王(1800年前後)/ 猫の王様(1908年)/ 猫の王様 物語篇 / 猫のアラビア夜話──グリマルカン王(抄・1881年)/ 猫王グリマルキン伝より──『もふもふ民の伝記集』収録(1910年)/ 解説・訳者あとがき

石の扉 キャリントン中・短篇集
- 著者:レオノーラ・キャリントン(Leonora Carrington)/ 野中 雅代(訳)
- 出版社:国書刊行会
- 発売日:2025/04/08
- メディア:単行本(シュルレアリスム叢書)
- 目次:彼らが丘の斜面を駆けたとき / 三人の猟師 / 鳩よ、飛べ!/ シリル・ド・ガンドル氏 / 悲しみにうちひしがれて / 姉妹 / 白兎たち / 待ちながら / 七頭目の馬 / 中性の男 / 私の母は牛です / 私のフランネルのニッカーズ / 製薬業創始法 / エト・イン・ベリクス・ルナルム・メディアリス / 幸福な死体の物語 / メキシコのお伽噺 / グレゴリー氏の蠅 / 砂の駱駝/ ジェミマと狼 / 石の扉 / 解説 「作家レオノーラ・キ...

人形のアルファベット
- 著者:カミラ・グルドーヴァ(Camilla Grudova)/ 上田 麻由子(訳)
- 出版社:河出書房新社
- 発売日:2025/05/15
- メディア:単行本
- 目次:ほどく / ネズミの女王 / ゴシック協会 / ワクシー / 人形のアルファベット / 人魚 / アガタの機械 / サイ / 蠟燭受けの悲しき物語 / エドワード、死者を甘やかすなかれ / ハンガリー産イワシ / 蛾の館 / 蜘蛛の手記 / 訳者あとがき

ギュスターヴくん
- 著者:ヒグチユウコ
- 出版社:白泉社
- 発売日:2016/09/16
- メディア:単行本(MOEのえほん)
- 内容:「きみはネコなの? ヘビなの?タコなの?」 いたずら好きのギュスターヴくんがつむぎ出す摩訶不思議な世界!

ドリーミング・ザ・ビートルズ
- 著者:ロブ・シェフィールド(Rob Sheffield)/ 神田 由布子(訳)
- 出版社:白水社
- 発売日:2025/09/25
- メディア:単行本
- 目次:序奏 ── 「ありがとう、モー」 / ミート・ザ・ビートルズ(1962─1970年)/ ディア・プルーデンス(1968年)/ アイ・コール・ユア・ネーム(1957年)/ プリーズ・プリーズ・ミー(1963年)/ ジョージの内面の神秘/ イット・ウォント・ビー・ロング(1963年)/ リンゴでいることの重要性/ 絶叫(スクリーム)/ 涙の乗車券(1965年)/ 噓つき女(1965年)/ ラバー・ソウル(1965年)/ ちょ...
posted by sknys at 00:02| 東京 ☁|
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