2026年01月21日

ネコ・ログ #80

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  • ネコが大型サイズじゃなくてよかった、という古いジョークがある。続きは 「もしそうだったら飼い主を食べてしまうから」。ネコ好きの科学者として、わたしの最初の反応は笑いで、すぐあとに 「どうやったらこの仮説を検証できるだろう?」 と考えはじめる。残念ながら、科学にも限界はある。体重35キロのイエネコをつくりだす方法が見つかるまで、決定的な答えは得られない。/ だからといって、科学界がこの問いに沈黙を保っているわけではない。20 24年のある研究論文は、「もしもネコがもっと大きかったらあなたは殺されている」 と結論づけた、と広く報じられた。ちなみにこれは『オーランド・センティネル』紙の見出しだ。『U SAトゥデイ』紙は細部を省き、「愛猫はあなたを殺したがっているかも」 と煽った。/ 実際の論文にそんなことは書かれていない。研究チームはイエネコからライオンまで、大小5種のネコ科の種に見られる、攻撃性や社交性などの行動傾向を比較した。おもな結論は、性格特性に関するかぎり、サイズはどうあれネコ科にあまり違いは見られない、というものだ。
    ジョナサン・B・ロソス「モダン・キャットのパラドックス」


  • 712│アオ│ノラ猫 ── 白猫の帰還
    真っ白いネコに出会う機会が激減したことや、ケリー・リンクのホラー童話 「白猫の離婚」に魅了されたことから、今まで撮り溜めた 「Photos」(MacOS)のアーカイヴスから青い目の白猫を蔵出しした。いつの間にか駅前公園から姿を消してしまったが、どこかで生き長らえているだろうか。ところで、大麻栽培農場を経営している白猫=美女は一体誰から 「離婚」 したのだろうか。本当は三男のことが好きらしい白猫は彼に断首されて、絶世の美女に変身した。さも当然のように老いた裕福な男(父親)に求婚されて、夜な夜な何度も首を斬られてタイプの異なる美女に生まれ変わる。厳格な家父長制や強制セックスという名の 「レイプ殺人」 への批判も読み取れなくもない(夫を殺さなければ離婚出来ないのか?)。若い男に転生したいという老主人の願いを聞き入れた美女は夫の首を斬って殺害し、白猫の姿に戻る。人語を話すことのない普通の猫として三男と幸せに暮らしたという結末は涙を禁じえない。

    713│バイ│飼い猫 ── 猫もバイリンガル?
    小説や絵本などに登場するネコたちは人語を話せるタイプと話せないタイプに分けられる。前者はトバモリーのように、人語を理解して人間の本心を曝け出す。後者はジョナスのように、お城で姉妹と暮らすネコらしいリアル・キャットとして描かれているが、ひょっとしたら、ネコ族は人語を話せないフリをしているのではないかと妄想することがあったりする。「なに、グリマルキンが死んだとな? さらばご機嫌よう、奥様」 と言って、家から出て行ったティットン・タットン。「あら、でも夢じゃなかったのよ」 と目覚めた三男に語りかける白猫(ケリー・リンク)、「わが輩もまた理想郷(アルカデイア)にあり」 と叫んで、芸術と学問に没頭した牡猫ムル。黒い縞の輪っかが右前脚に2つあるシマっこ。小学校に入学したレオくん。頭の上に猫缶を載せて 「泣く子はいねが〜」 と呼びかけながら夜廻りして、「涙の匂い」 を嗅ぎつける遠藤平蔵など。飼い猫に深夜、突然話しかけられたら、ホラーかもしれない。

    714│サカ│飼い猫 ── キジトラは人懐っこい?
    12月タイで開催されたミス・ユニバース世界大会に出場したフィンランド代表サラ・ジャフチェ氏が 「つり目」 写真をSNSに投稿して炎上し、激しい非難に晒された。ミス・フィンランドは軽いジョークのつもりだったらしいが、「slanted eye(つり上がった細い目)」 のポーズは、歴史的にアジア人を嘲笑うのに使われて来たという。このジェスチャーを謝罪したジ ャフチェ氏はミス・フィンランドの王冠を剥奪された。さらに彼女を支持する右翼政党の議員2人が 「つり目」 写真を投稿して火に油を注ぎ、ペッテリ・オルポ首相も謝罪する騒動とな った。サカちゃんは強面ですが、見た目に反して人懐っこい。数年前、デジカメ(NEX-5N)を修理に出した時、携行していたネコの透明アルバム(L判・20枚用)を目敏く見つけた 「ソニーサービスステーション」 の女性から、キジトラは人懐っこい性格じゃないかしらと訊かれた。サカちゃんに 「つり目」 のジェスチャーをしても、猫権差別だと怒ったりしませんが。

    715│スパ│飼い猫 ── 猫面探偵ニャン
    セルジョ・トーファノの 「無敵の隊長ウグッチョーネ・デッラ・スタニョーラ、自分自身の捕虜になる」 は河水や雨に濡れて甲冑が錆びつき、脱げなくなった男の顛末だった。石森章太郎の「酔いどれ探偵鉄面クロス」 と 「鉄面探偵ゲン」は怪盗クロスが自分の身代わりにしようとして、一度装着したら二度と外せない鉄仮面を着けられた十文字元の物語。シチュエーシ ョンは異なるが、どちらも甲冑と鉄面を外せないという状況に変わりはない。サリンジャーの 「エズメに、愛と悲惨をこめて」 ではヴァローニュの砲撃戦で塹壕に身を伏せていた時、ジープのボンネットに飛び乗って来た猫を撃ったという戦時中のエピソードが語られる。Z伍長(クレイ)の話に、X三等曹長は 「あの猫はスパイだったのさ。撃つしかなかったんだよ。すごく頭のいい小人のドイツ人が安物の毛皮をかぶってたんだ」 と茶化す。猫を撃つのは御法度だが、敵兵ならば射殺しても止む無しという戦時の捻れた論理が罷り通るのだ。

    716│アラ│飼い猫 ── 猫王グリマルキンが死んだ!
    友人宅に泊まっていたストリーマ氏は猫たちの鳴き声が煩くて眠れず、同じ屋根の下の人たちと猫についての雑談を始めた。使用人の1人が郷里に伝わっている話をする。ある人がカノックの森を馬に跨って通り抜けていると、薮から目の前に飛び出して来た猫が男の名前を二度三度呼んだ。怖くて黙っていたら、飼い猫に伝言を頼まれた。帰宅後、その出来事を妻と家族に話し終えると、聞き耳を立てていたティットン・タットンが 「なに、グリマルキンが死んだとな? さらばご機嫌よう、奥様」 と言って、家から出て行ったという。英語で書かれた最初の小説『猫にご用心』(Beware The Cat 1553)は人語を話す猫によって、猫王グリマルキンの死が伝播される。コラン・ド=プランシーは『地獄の辞典』(第六版 1863)の中で、「猫に化けてサバトに現われる魔神を、英国の魔女たちはグリマルキンと呼ぶ」 と解説しているが、そもそも牝猫だったというから、「女王」 なのではないかと思ったり‥‥最近見かけないアラちゃんも伝言を聞いて、家から出て行ったのでしょうか?

    717│ソラン│飼い猫 ── 追憶のシャ・ノワール
    〈メモリアル・キャッツ 4〉は黒猫ソランちゃんのスライドショーにしました。ミラーレス(NEX-5N)で撮ったソランちゃん写真16点を纏めてみました(未投稿・初公開写真5点を含む)。「CSSだけで自動再生スライドショー」 を作るところがミソで、表示とディレイ時間の計算が少し面倒ですが、新ブログでも問題なく動作しているのが嬉しい。移行してからジャバ(JavaScript)を使った 「ランダム表示」 は無効化してしまった。思い返すまでもなく、ソランちゃんは理想的な黒猫で、初めて出会った時から、その神秘的な佇まいに魅惑されて来ました。視認するとニャンと鳴いて、駆け寄って来ました。人懐っこく足許に寄って来て、スリスリします。撮影にも協力的。丸々と見開く金眼、黒くて長い尻尾、いつもテカっていた鼻の頭。写真はスライドショーに入れられなかったアウトテイクです。どういうヨガポーズだったのか覚えていませんが、前肢ではなく後肢だと思います。

    718│マロ│ノラ猫 ── 白猫にご用心
    青い目のアオちゃんと同じく、フォト・アーカイヴスをスクロールしていて見つけた白猫。ネコ同士で激しい喧嘩したのだろうか、マロさまの左頬の毛がゴッソリと抜け落ちて、赤黒い地肌が露わになっていたことがあった。痛くないのかなと心配していたけれど、驚異的な治癒力で、見る見るうちに白い毛で覆われて恢復したのだ。都会のノラネコに、大自然で生きるネコ科野生動物の片鱗に触れて、その逞しさに感じ入った。いつの間にかマロちゃんの姿も駅前公園から消えてしまった。ブロガーの 「ぶーけ」 さんは 「白猫さん、花冠をかぶせたい」 とコメントを寄せてくれましたが、マロさまには遠藤平蔵が冠っているような 「猫缶」 を載せたいと思います。ちゃっかり白猫のワカルちゃんみたいに、見習い 「夜廻り猫」 になったんじゃないかと想像するのは愉しい。

    719│ミラ│飼い猫 ── 高いところが大好き
    今日も高い塀の上から路地を睥睨している黒猫に出会った。悠然と下界を見降ろす、ネコからの 「上から目線」 はちょっと癪に触わらなくもない。ソン(名前の由来は孫悟空)ちゃんも塀や門柱の上が好きな気品のあるネコだったが、ミラちゃんには見下(くだ)されているのではないかという猜疑心が芽生える。ダンボール箱のネコ小屋も高いところに設置されているという念の入り様だ。室内飼いならばタワマンの高層階が似合いそうな黒猫である。日米ハーフのSSW芽衣シモネスは〈Dangomushi / だんご虫〉で、「空気は煙と / 電車の通る音 / 向かいのコンビニの / 小ちゃい黒猫」 と日本語で歌っている。「優しい声 / 大きな耳」 という歌詞が出て来る〈Tora Moyo / 虎模様〉は縞ネコのことかと思っていたけれど、彼女が愛用している 「濃い赤色 虎模様の」 ギターのことだった(ギターの 「大きな耳」 って、どこにあるにゃん?)。ちなみに黒猫の左上に写っているのは隣家のカーヴミラーです。

    720│ベル│飼い猫 ── ガラスの理髪店
    うぐいす歌子は元海上自衛官という異色のイラストレーター・漫画家である。美大で日本画を学んだというモフモフした 「和のテイスト」(洋猫も和猫に見える)は猫画家のヒグチユウコ、町田尚子、石黒亜矢子などにはない強みではないかしら。『今日もネコ様の圧が強い』(KADOKAWA 2025)はSNSで人気になっている猫マンガ 「キジネコ様」 に描き下ろしを追加して単行本化。《とても好戦的なお方。お触りはほぼ不可能。活発なご性格。高いところに登ったり、物を壊したりするのがお仕事》のキジネコ様と《お顔は怖いが、本当は少々臆病。おやつが好きすぎる。物静かで、キジネコ様とは喧嘩しがち。部屋は別々に暮らしている。元野良猫さんで、人間の家には来たばかり》のクロネコ様が同居カップル、金之助とスミレの2人に毒を吐く。特筆すべきは同じ絵をコピーして、トリミングする使い回しの手法(手抜き?)が少し鼻につく。理髪店の看板猫ベルちゃんの写真は既出写真のトリミングではなく、アップで別撮りした。ガラス越しに撮ったので、ヒゲが剃られてしまった?

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する 「ネコ・カタログ」(cat-alog)の第80集です。サムネイルをクリックすると投稿した記事のネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコの見出しをクリックするとトップに戻ります。今までに720匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していたことに驚かされます。第80集の常連ネコは黒猫ソランとキジトラのサカちゃん。先日、近所の三毛が撮れました。今までは目が合うと直ぐ逃げてしまうのですが、警戒しつつも静止して対象を見定めていました。やっと顔を憶えてくれたのかしらと嬉しくなりました。改めて間近で対面してみると、キリッとした男前(牝猫だと思うけれど)、その小さな躰と真摯な眼差しがネコであることを主張しているかのようです。「ネコが大型サイズじゃなくてよかった」 と思います。ジーン・ウルフの 「ソーニャとクレーン・ヴェッスルマンとキティー」 では遺伝子操作で生まれた女優ジュリー・ニューマー(キャットウーマン)似のネコ娘が死んだ主人を食べてしまうのですから。

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    ドリーミング・ザ・ビートルズ

    ドリーミング・ザ・ビートルズ

    • 著者:ロブ・シェフィールド(Rob Sheffield)/ 神田 由布子(訳)
    • 出版社:白水社
    • 発売日:2025/09/25
    • メディア:単行本
    • 目次:序奏 ── 「ありがとう、モー」 / ミート・ザ・ビートルズ(1962─1970年)/ ディア・プルーデンス(1968年)/ アイ・コール・ユア・ネーム(1957年)/ プリーズ・プリーズ・ミー(1963年)/ ジョージの内面の神秘/ イット・ウォント・ビー・ロング(1963年)/ リンゴでいることの重要性/ 絶叫(スクリーム)/ 涙の乗車券(1965年)/ 噓つき女(1965年)/ ラバー・ソウル(1965年)/ ちょ...

    ネコはどうしてニャアと鳴くの?

    ネコはどうしてニャアと鳴くの?すべてのネコ好きに贈る魅惑のモフモフ生物学

    • 著者:ジョナサン・B・ロソス(Jonathan B, Losos)的場 知之(訳)
    • 出版社:化学同人
    • 発売日:2025/02/13
    • メディア:単行本
    • 目次:モダン・キャットのパラドックス / ネコはどうしてニャアと鳴くの? / 優しいものが生き残る / 数の力は偉大なり / 昔のネコと今のネコ / イエネコという「種」の起源 / 古代のネコを掘り起こす / ミイラが明かす本当の故郷 / 三毛柄トラがいないわけ / モフモフネコの物語 / 百花繚乱キャットショー / しゃべりだしたら止まらない / 伝統品種と新品種 / ヒョウ柄ネコと野生のよび声 / キャットアンセス...


    白猫、黒犬

    白猫、黒犬

    • 著者:ケリー・リンク(Kelly Link)/ 金子 ゆき子(訳)
    • 出版社:集英社
    • 発売日: 2024/10/25
    • メディア:単行本
    • 目次:白猫の離婚 / 地下のプリンス・ハット / 白い道 / 恐怖を知らなかった少女 / 粉砕と回復のゲーム / 貴婦人と狐 / スキンダーのヴェール / 謝辞 / 訳者あとがき


    今日もネコ様の圧が強い

    今日もネコ様の圧が強い

    • 著者:うぐいす歌子
    • 出版社:KADOKAWA
    • 発売日:2025/01/08
    • メディア:コミック
    • 目次:ネコ様と人間の紹介 / 我が家のネコ様 / ネコ様のある日 / ネコ様と人間 / ネコ様のお写真 其の一 / 長編描き下ろし キジネコ様がいなくなった日 / リアルネコ様の裏話 / ネコ様のお写真 其の二 / ネコ様語録 / あとがき


    Animaru

    Animaru

    • Artist: Mei Semones
    • Label: Bayonet
    • Date: 2025/05/02
    • Media: Audio CD
    • Songs: Dumb Feeling / Dangomushi / Tora Moyo / I Can Do What I Want / Animaru / Donguri / Norwegian Shag / Rat With Wings / Zarigani / Sasayaku Sakebu
    ラベル:catalog Cats
    posted by sknys at 00:09| 東京 ☔| Comment(0) | c a t a l o g | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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