2025年11月11日

フィーライン・ノンフィクション 22



  • さて、私は本は溜まると場所をとるので、本のある生活というのは、本当にいやなものだ、ということを本稿(「本のある生活」 という主題で書くことを求められた)の主題として選んだったのだが、その前に 「猫の王様」 という昔話を紹介したいと思う。/ ある、冬の夕刻近くお百姓が自分の畑で仕事をしていると畑を囲った竹の低い石垣の向こうを、大きな何匹もの猫たちの行列が、丁度大きな猫が入るのにぴったりの黒い棺桶をかついで村の墓地の方へ向かった歩いて行くところで、棺の上には小さな見事な細工の王冠が載っていた。不思議な光景を見たお百姓は家に帰って台所で夕食を食べながら、おかみさんに自分の見た猫の葬列のことを話してきかせた。すると気持ち良く燃えている暖炉の前で丸くなって眠っていた飼い猫のトム(黒い大きなオス猫)が急に起き上がり、「じいさんが死んだんだ。こうしちゃいられない! 猫の王位を空位にしておくわけにはいかないぞ、行って王様にならなくちゃ!」 と(人間の言葉)で叫んで、後も見ずに外に飛び出して行き、二度と戻ってこなかった。
    金井 美恵子「増殖する物体としての本」

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    • ノーベル文学賞作家のネコ・エッセイは今日の愛猫家が卒倒するくらい過激にゃん

    • 「波」 に連載されていた 「遊興一匹」 を中心に編まれた 「純文学的ネコバカエッセイ」

    • 猫好き作家バロウズが友人や恋人や家族の面影を愛猫たちに重ねる内省的なエッセイ

    • 1974年パリ、ル・マレ地区のアパルトマンに引っ越して来た夫婦が黒猫と出会う

    • グールド夫妻が動物保護センターから貰い受けた三毛猫は雄(ジョージ)だった!

    • 子供の頃から猫と親密な関係を保っていた詩人・評論家へのロング・インタヴュー集

    • ユング派の心理療法家が 「猫本」 を読み、猫を通して 「人間のたましい」 について語る

    • 涙なくしては読めない野良猫奮闘記。作家が闘うのは 「ネコ」 ではなく 「ヒト」だった

    • 自称・半猫人の 「慣用句、諺、成句、季語、話題の用語など、言葉をめぐるエッセイ」

    • 米在住の作家が独身女性に贈る恋愛指南書。文庫版『結婚するなら、猫好きオトコ』

    • 女性イラストレーターが愛猫たちとの 「出会い」 「生活」 「暮らし」 を綴ったエッセイ

    • 図書館長ヴィッキー・マイロンとデューイ・リードモア・ブックスの運命的な出会い

    • 盲目の黒猫ホーマーの里親となった作家(わたし)の感涙的ネコ・ノンフィクション

    • ネコ嫌いの老母と同居している書店員がノラコ(三毛猫)を内ネコとして飼う顛末記

    • 「猫びより」 に連載された少女マンガ家(吉本隆明の長女)の実録 「シロミ介護日誌」

    • 「スミソニアン」 誌の女性記者による 「洗脳ネコ本」。原題は 「居間にいるライオン」

    • 古今東西の文献や作品を引用して縦横無尽に論じる著者の筆致は博覧強記で容赦ない

    • イエネコを外来捕食者という視点で科学的に検証する。愛猫家にとっては耳の痛い話

    • 英政治哲学者は哲学や作家の愛猫を引用して、人と猫との親密な関係や相違を考察する

    • ネコ心理学者が実験と研究によって、ネコの優れた認知・思考能力を解明した学術論文

    • NY在住のマンガ家・アーティストのエッセイとイラストを収録したハードカヴァ文庫

    • 「あなたの猫と最高のコミュニケーションをとる方法」 とは?『ネコ学入門』の改訂版
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    〈フィーライン・フィクション 22〉の続編は 「ネコ・ノンフィクション」。猫本リスト〈猫ゆりすと〉の中から 「偏愛的猫本22冊」 を選んでみました。国内本は気軽に読める 「猫エッセイ」、海外翻訳本は胸熱の実録や論文・研究書という相違があるようです。復刊した文庫版『迷い猫あずかってます』(中央公論新社 2023)のページをパラパラと捲っていて、「猫の王様」 という 「昔話」 に目が点になりました。金井美恵子が紹介している 「昔話」 のオリジナルがウィリアム・ボールドウィンの 「猫にご用心」(Beware The Cat 1553)ではないかと思い当たったから。お百姓が目にした畑の向こうを歩いて行く猫の葬列とカノックの森を馬に跨って通り抜けていた男の目の前に藪から飛び出して来た猫(人語を話す)という違いはありますが、家に帰って夕食を食べながら家族(おかみさん)に話した珍しい出来事(不思議な光景)を聞いていた飼い猫が 「(人間の言葉)で叫んで、後も見ずに外に飛び出して行き、二度と戻ってこなかった」 という結末は一致しています。「猫にご用心」 の飼い猫はトムではなく、ティットン・タットン。死んだ 「猫の王様」 の名前は猫王グリマルキンです。

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    迷い猫あずかってます

    迷い猫あずかってます

    • 著者:金井 美恵子
    • 出版社:中央公論新社
    • 発売日:2023/03/23
    • メディア:文庫(中公文庫 か 15-4)
    • 目次:トラ!トラ!トラ!/ 銀座の猫、家の猫 / 小さな虎さん / 猫を飼う / 遊興一匹 / 「トラー」 とはどんな動物か / 猫を去勢すること / 散歩も出来ない / 猫の戦略 / 猫には七軒の家がある / 猫のおかあさん / 猫と暮す──蛇騒動と侵入者 / エビに猫舌無し / ウサちゃん / 日だまりでの昼寝 / ピクニックに行こうと思う / 増殖する物体としての本 / 猫の爪研ぎ / 「猫」 散見 / 反復不可能 / カーテンを替えよう...


    猫だましい

    猫だましい

    • 著者:河合 隼雄
    • 出版社: ‎新潮社
    • 発売日:2002/11/28
    • メディア:文庫(新潮文庫)
    • 目次:なぜ猫なのか / 牡猫ムル / 長靴をはいた猫 / 空飛び猫 / 日本昔話のなかの猫 / 宮沢賢治の猫 / 怪猫――鍋島猫騒動 / 100万回生きたねこ / 神猫の再臨 / とろかし猫 / 少女マンガの猫 / 牝猫 / あとがき / 感想マンガ “黒猫の思い出" 大島弓子 / 参考文献一覧

    猫舌三昧

    猫舌三昧

    • 著者:柳瀬 尚紀
    • 出版社:朝日新聞社
    • 発売日:2002/09/01
    • メディア:単行本
    • 目次:蟹文字 / コーヨー語 / 口口 / 羊の腸 / ヒポクラテス / ラヴレター / 嘘 / 盤寿 / エスキモーに雪を売る / 西施の顰みに倣う / 椿と鮎 / 煙草 / love=ゼロ / 雪と白扇 / 藝と芸 / 投企 / 犬の日々 / 俳句 / ナオキの矢 / 白象 / ことゆえ / パランプセプト / 秋刀魚と豆腐 / うるう年 / 「うーん」 「んーん」 / 「。」 と 「、」 / 孟母三選 / 体言止め / トカゲのしっぽ切り / テクハラ / 薮さんと三角さん / 王道 / ...

    結婚するなら、猫好きオトコ

    結婚するなら、猫好きオトコ

    • 著者:小手鞠 るい
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:2008/02/04
    • メディア:文庫(『オトコのことは猫に訊け』を改題、一部加筆)
    • 目次:結婚するなら、猫好きな男 / 猫に学ぶコミュニケーション術 / 人はなぜ、猫に癒されるのか


    一年前の猫

    一年前の猫

    • 著者:近藤 聡乃
    • 出版社:ナナロク社
    • 発売日: 2024/08/29
    • メディア:文庫(ハードカヴァ)
    • 目次:アサリの子 / 隠れ猫百匹 / 消えたヨーグルト / クルクルニャ?/ ◯◯ちゃんのあんず / 空き地の円柱 / 彼女のフレンチトースト / 一年前の猫


    ネコ学: あなたの猫と最高のコミュニケーションをとる方法

    ネコ学 あなたの猫と最高のコミュニケーションをとる方法

    • 著者:クレア・ベサント(Claire Bessant)/ 三木 直子(訳)
    • 出版社:築地書館
    • 発売日:2024/11/08
    • メディア:単行本(『ネコ学入門』の改訂版)
    • 目次:はじめに / 猫の 「エッセンス」 / 人間と暮らす猫の行動に影響を与えるもの / あなたの猫の性格を知る / 人は猫に何をしてほしいのか?/ 猫のニーズと欲求は人が猫のために求めるものと違うのか?/ 猫好きとはどういう人たちか? 猫は猫好きをどう思うのか? / 私たちは猫を利用している?/ 猫との対話 / 我が家の猫の場合──私たちはどうやって会話するか
    ラベル:list Cats books Favorites
    posted by sknys at 00:03| 東京 ☁| Comment(2) | f a v o r i t e s | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
    この記事へのコメント
    金井美恵子の本、続きを読みたい!
    検索掛けたら、増殖する物体としての本、というタイトルの本はない、といわれましたが、「迷いネコあずかってます」の目次をよくみたら、ちゃんとありました。(^^♪
    Posted by ぶーけ at 2025年11月18日 20:55
    「文字を読めるようになって以来、四十年、本が自分の生活の周辺に存在しなかったことは二度の手術の入院生活を含めて、一度もなかったし、肉体的な痛みを忘れさせてくれたのはある種の本を読むことによってだった」
    金井おばさんはノーベル文学賞の候補に挙がっています^^;
    Posted by sknys at 2025年11月19日 12:22
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