2025年10月01日

ネコ・ログ #79

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  • フレームに金色のペンキでミシン会社の名前、ナイチンゲールを書き入れるのがわたしの仕事だった。/ この仕事に就いたばかりのころ、どのミシンにもナイチンゲールと書くのは退屈だし残酷なことのように思えた。怯えた黒猫みたいなミシンたちに、みんなまったく同じ名前をつけるなんて。ダンシーとかベロニカなんて名前をつけたらかわいいだろうなと思ったけれど、そんなことしたら間違いなくクビになるだろう。ほどなくして、私に書けるのはナイチンゲールと言う言葉だけなんだと思うようになった。/ ポーリーンとスチュアートの部屋には、女性の下着が蜘蛛の巣のように、虫のように、花のように、そこらじゅうあり余るほどぶら下がっていたが、ポーリーンは一着たりとも譲ってくれなかった。壁紙は濁った緑色。すべて茶色で統一されたベッドとクローゼット、私に書けるのはナイチンゲールと言う言葉だけなんだと思うようになった。
    カミラ・グルドーヴァ 「ワクシー」

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    703│ベル│飼い猫 ── お外に出て来ました
    ベルちゃんは出窓越しに撮ったことのある茶トラ猫。「深窓の令嬢?」 かと思っていたら、外へ出て来ていた。一見カットされすぎた左耳が痛々しいけれど、本人は意に介していないらしい。6月21日に 「EL SUR」(東京渋谷のWorld Music Disc Shop)が 「とりあえず、閉店」 した。宮益坂下の 「幽霊マンション」(10F)から、公園通りのビル(5F)に移転(2016)したのだが、ここ数年の急激な円安による輸入盤の値上がりや渋谷再開発の煽りを真面に喰らって已む無く閉店することになったという。5月に立ち寄った時は店主のH**さんにコーヒーを淹れてもらい、閉店セール中(30%off)の店内を物色した。魑魅魍魎が集結するという最終日は敬遠して、閉店2日前に再度訪れ、店内の写真を撮って、店主推薦のアルバムを購入した。その時は新店舗に移転出来るかどうか分からないと悲観的だったので心配していたけれど、江戸川橋で再開することになった。「大洋レコード」(神楽坂)の近くなので、都内の希少なレコード・ショップを梯子出来るのが今から愉しみです。

    704│ペタ│飼い猫 ── 「ミロを見ろ!」 なんちゃって
    近所のペタちゃんとは仲良しだ。彼女のテリトリー内に入るや否や、フンフンと鳴きながら近寄って来る。不思議なことに人間がネコを見つけるよりも、ネコが人間を見つける方が早い。視覚(容貌)なのか、聴覚(足音)なのか、第六感(気配)なのか分からないけれど、近づいて来る他者を認識して特定する能力は人間よりも優れていると言わざるを得ない。ネコは自分に付けられた名前が呼ばれれば反応するし、名前を知らない特定の人間の容姿も記憶している。日本の民藝運動にも共感していたジュアン・ミロは《創り人知らずの立場をとることで、私は自分を捨てることができ、自分を捨てることで、さらに自分を肯定し主張することができる。沈黙がノイズの否定であるのと同じように、沈黙の中のわずかなノイズは壮大な音楽になるのです》と書いている。名無しのネコたちも沈黙という静寂の中で、人間の発するノイズを心地よい音楽のように聴いているのかもしれません。

    705│ルー│ノラ猫? ── 昼廻り猫
    外ネコは猛暑の夏でも縄張りのパトロールを欠かさない。室内飼いの家ネコはアクシデントでもない限り外へ出ることは稀だが、出入り自由の放し飼いのネコはエアコンの効いた涼しい室内から、日差しが強く照りつける暑い外へ出たがらないのか。それとも『夏への扉』のピートのように、たとえ雪や雨が降っていても外へ出たがるのだろうか(日本では事故や感染のリスクの少ない室内飼いが奨励されているけれど、クレア・ベサントは必ずしも室内外を推奨していない)。後述するゲンちゃんを撮る目的でに行ったのだが、その手前で細身の茶トラに出合った。歩くネコの後を尾けて、今来た道を十数メートル戻る。テリトリの警邏中なのか歩き続けているルーちゃんが立ち止まるのを待って、数枚の写真を撮る。民家の狭間へ姿を消したのを見届けて、先日キジトラのいたところまで引き返した。運良く同じ場所にいたゲンちゃんに猫語で挨拶する(つづく)

    706│ゲン│飼い猫 ── 東京は猛暑日です
    長毛種ロンちゃんのいない遊歩道は寂しい。古くなったセピアカラーのように色褪せて見える。久々に歩いていると、ネコ・ヴォランティア夫妻が茶トラに食事を与えていた。暫く姿を見なかったのは近くの団地の方に移動したからだという。通りかかった初対面の男性が三人の輪に加わり、ネコ嫌い、虐待、TNR(Trap、Neuter、Return)などについて暫し話し合う。外ネコが少なくなったという男性に同意すると、ヴォランティア女性が反論した。普段歩いている通り道に見かけないだけで、他の場所にネコたちはいるということらしい。というわけで、いつもとは違うルートを歩いていたら、ある裏通りで若い女性がキジトラを撫でていた。その日はデジカメを携行していなかったので見て見ぬ振りをして、後日行ってみた。運良く同じ場所にいたゲンちゃんに猫語で挨拶すると、鳴きながら近づいて来た。毛並みを撫でていると、帰宅する女性の足下に纏いつく。女性は奥まった民家の玄関を半開きにして夕食を与える。食事の邪魔をするのは悪いと思い、帰りに再び寄って撮った。

    707│アン│ノラ猫 ── 消えたミケちゃん
    放し飼いの外ネコは何時行っても同じ場所で出会える可能性が高いので、その姿を暫く見かけなくても心配することは滅多にない。しかし、ある日突然姿を消してしまうことの少なくないノラネコ(今まで何匹のネコたちがいなくなったか数知れない)の場合は常に不安感を胸中から払拭出来ない。三毛ネコの姿を1カ月前から見ていないとI**駅前公園のネコウォッチャーから言われた時はショックだった。可愛くて器量良し、膝の上に乗るほど親和性の高いネコなので、彼女を捕獲して連れ去るのは見知らぬ人であっても容易いだろう。約10年前に一度消息不明になったことがあった。その時は二週間ほど姿を消した後、左耳先をカットされて(ネコヴォランティアに捕獲され、不妊手術を施された)公園に戻って来た。アンちゃんが再び帰って来ることがあるのかどうか憂慮している。

    708│ゼン│ノラ猫 ── ネコも感染症?
    Z**寺の前庭に3匹のネコがいた。開いていた門から入って、見守っている2人の女性に写真を撮っても良いですかと断る。近づいても逃げ出したりしない茶白ネコを撮った。ゼンの体毛に茶色の小さな虫が付着していることに気づく。これが話題のマダニ(ツツガムシ?)なのかと思う。マダニによるSFTS感染者が年々増加しているという。マダニに噛まれた60代の女性や感染したネコを治療した獣医師も亡くなったことが報じられているので、注意しなければならない。元祖ライオット・ガルーのキャスリーン・ハンナ(Kathleen Hanna)はライム病に感染して長きに渡って闘病していたことを公表している。彼女は言わずと知れたビキニ・キル(Bikini Kill)〜ル・ティグラ(Le Tigre)〜ザ・ジュリー・ルイン(The Julie Ruin)のフロント・ウーマン。ちなみにBikini Killのアルバム《The Singles》(Bikini Kill 2018)はピッチフォークのレヴューで、10点満点を獲得した。

    709│ケイ│飼い猫 ── 家政猫のミケノゾ
    「家政婦は見た!」(テレ朝 1983-2008)、「家政婦のミタ」(日テレ 2011)、「家政夫のミタゾノ」(テレ朝 2016-)とタイトルを少しづつ変えながら続いているTVドラマがある。家政婦紹介所から派遣された家政婦(夫)が、その家族たちの欺瞞や事件を暴くというストーリ ーは変わっていないが、シリーズ第1作目は松本清張の『熱い空気』(1963)が原作だったという。清張の社会派ミステリよりも筒井康隆のSF『家族八景』(1972)を思い浮かべてしまうのは世代差だろうか。近所にいる三毛ネコは世話をしている女性と一緒にいる時は逃げたりしないけれど、単独で出会うと停車中のクルマの下や民家の狭間に隠れてしまう。今回も家の前柱の隙間に身を隠しているケイちゃんを何とか撮れた。その姿は物陰から覗き見する家政婦(市川悦子)みたいではないか(覗いているのは盗撮者の方だが)。日暮れて暗い時間帯の写真なので、Photo(MacOS)で明度を上げ、Previewで影を薄くしている。

    710│ブン│地域猫 ── B**高校のネコ
    ある日、都電から下車して、S**図書館へ続く道を歩いていた。左側に建つ都立B**高校裏の石塀に白黒ネコがいた。通りがかりの若い女性が体を撫でても逃げ出すどころか甘えた声で鳴き続ける。スマホで写真を撮っている女性に、カメラを携行してくれば良かったと話す。日向ぼっこをしているじゃないかと女性が言う。後日、再会出来ることを願いながら同じように図書館へ行く途中、猫語で声をかけると、眠っていたらしいブンちゃんがフェンスを潜り抜けて顔を見せた。これ幸いと写真を撮っていると、今度は母親と2人の子供が立ち止まって興味深そうにネコを眺める。少し高い石塀の上にいるので、小さな子供には見え難い。家族連れが離れて行くと、ネコは歩道に飛び降りて車道を渡り、向かい側の煉瓦敷きスペースで腹ばいになった。この場所の方がリラックス出来るらしく、ネコの撮影にも適している。少しすると何を思ったのか、再び車道を横切って高校の裏門内に入る。再度、民家の植え込みの中で腰を落ち着けたところで、お別れしました。

    711│ゴト│飼い猫 ── 猫ストーカーに注意!
    三毛ネコのゴトちゃんは人見知りなのか、自ら近寄ってくることはない。女飼主と一緒にいる時は安心しているのか逃げたりしないけれど、ケイちゃんと同じく一対一で出会った時は「猫ストーカー」 かどうかを見定めた後で、その場からソソクサと離れて行く。三毛ネコに共通した性向なのだろうか。同じ場所で一緒に暮らす人懐っこいツリ目のキジトラとは対照的である。数年前、ミラーレス・カメラ(NEX-5N)を修理に出した時、いつも携行しているネコ写真(20枚入りフィルムアルバム)を目敏く見た 「ソニーサービスステーション」(秋葉原)の受付嬢がキジトラは人懐っこい性格なんじゃないかと話したことを思い出す。後日、修理したカメラを受け取りに行った際に対応した男性は 「毛並みの写りが違う」 とか言ってフルサイズ・カメラを勧めたが、いまだに買い替えず 「APS-Cサイズ」 のまま使用している。

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    各記事のトップを飾ってくれたネコちゃん(9匹)のプロフィールを紹介する 「ネコ・カタログ」(cat-alog)の第79集です。サムネイルをクリックすると投稿した記事のネコ写真に、右下のナンバー表の数字をクリックすると該当紹介文にジャンプ、ネコの見出しをクリックするとトップに戻ります。今までに700匹以上のネコちゃんを紹介して来ましたが、こんなにも多くのネコたちが棲息していたことに驚かされます。第79集の常連ネコはペタ、アン、ゴトちゃん。消息不明になったアンちゃんの去就が心配ですが、ネコ好きの誰かに貰われて行 って飼い猫になったと思うことで安堵することにしました。今年の夏は記録的な猛暑で、外ネコたちの姿を見かけることが少なくなったと感じます。気象庁は40℃以上の夏日に相応しい新たな名称を検討しているようですが、民間で使われている 「酷暑」 で良いのではないかしら。こんなことに労力を注ぐよりも天気予報や台風の進路、線状降水帯(ゲリラ豪雨)発生予測の精度を上げて欲しいものです。気象変動(地球温暖化)の影響は人間だけでなく、ネコにとっても深刻な事態だと思います。

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    人形のアルファベット

    • 著者:カミラ・グルドーヴァ(Camilla Grudova)/ 上田 麻由子(訳)
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:2025/05/15
    • メディア:単行本
    • 目次:ほどく / ネズミの女王 / ゴシック協会 / ワクシー / 人形のアルファベット / 人魚 / アガタの機械 / サイ / 蠟燭受けの悲しき物語 / エドワード、死者を甘やかすなかれ / ハンガリー産イワシ / 蛾の館 / 蜘蛛の手記 / 訳者あとがき


    夏への扉 新訳版

    夏への扉 新訳版

    • 著者:ロバート・A・ハインライン(Robert A. Heinlein)/ 小尾 芙佐(訳)
    • 出版社:早川書房
    • 発売日:2009/08/07
    • メディア:単行本(ソフトカヴァ)
    • 内容:ぼくが飼っている猫のピートは、冬になるときまって夏への扉を探しはじめる。家にたくさんあるドアのどれかが夏に通じていると信じているのだ。そしてこのぼくもまた、ピートと同じように“夏への扉”を探していた。『アルジャーノンに花束を』の小尾芙佐による新しい翻訳で贈る、永遠の青春小説


    ネコ学: あなたの猫と最高のコミュニケーションをとる方法

    ネコ学 あなたの猫と最高のコミュニケーションをとる方法

    • 著者:クレア・ベサント(Claire Bessant)/ 三木 直子(訳)
    • 出版社:築地書館
    • 発売日:2024/11/08
    • メディア:単行本
    • 目次:はじめに / 猫の 「エッセンス」 / 人間と暮らす猫の行動に影響を与えるもの / あなたの猫の性格を知る / 人は猫に何をしてほしいのか?/ 猫のニーズと欲求は人が猫のために求めるものと違うのか?/ 猫好きとはどういう人たちか? 猫は猫好きをどう思うのか? / 私たちは猫を利用している?/ 猫との対話 / 我が家の猫の場合──私たちはどうやって会話するか


    THE SINGLES

    THE SINGLES

    • Artist: Bikini Kill
    • Label: Bikini Kill Records
    • Date: 2018/09/25
    • Media: Audio CD
    • Songs: New Radio / Rebel Girl / Demirep / In Accordance To Natural Law / Strawberry Julius / Anti-Pleasure Dissertation / Rah! Rah! Replica / I Like Fucking / I Hate Danger
    posted by sknys at 00:03| 東京 ☁| Comment(0) | c a t a l o g | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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