2025年06月26日

スニーズ・ラブ 125

  • Joan Miro Girl Escaping 1967



  • b ある独裁者の死(2025-06-07)books
  • ある南米の独裁者の物語『族長の秋』(新潮社 2025)は章立てのない空白で、6つのパートに分かれている。いずれも大統領の死から始まり、改行なし、鉤括弧(「 」)なしの会話と引用、誰とも知れない複数の話者による独白や回想で自在に語られる。名無しの大統領(閣下)、母親ベンディシオン・アルバラド(娼婦)、パトリシオ・アラゴネス(影武者)、マヌエラ・サンチェス(美人コンテスト優勝者)、ロドリゴ・デ=アラギル将軍(腹心)、正妻レティシア・ナサレノ(修練女)と息子エマヌエル、ホセ・イグナシオ・サエンス=デ=ラ=バラ(暗殺者)など‥‥病死した母親、大統領と日蝕を眺めていた時に、レメディオス(小町娘)のように姿を消した美女マヌエラ、生娘のような手とヘルニアで腫れた大きな睾丸を持ち、大足を引き摺るように歩く大統領以外は残虐・グロテスクに殺される。『百年の孤独』(2024)の文庫版(未だに区立図書館の予約待ち者が数十人いる)解説で、筒井康隆が 「読むべきである。読まねばならぬ。読みなさい。読め」 と力説していたが、読みたい人が1人もいないのか予約なしで借り出せる。文庫版の腰巻(ネタバレ)には興醒めしたけれど。

  • b 黒猫を飼い始めた。(2025-06-14)cats
  • 会員制読書クラブMRC(Mephisto Readers Club)に公開された26篇を収録したショート ・ショート第1弾。『黒猫を飼い始めた』(講談社 2025)という表題の一文で書き始めるルールが課せられている。"謎を愛する本好きのための "MRCらしく、ミステリ色が濃いけれど、SFやホラーも散見される。「妻の黒猫」(潮谷験)はポーの 「黒猫」 、「ヒトに関するいくつかの考察」(紺野天龍)は漱石の 「猫」 のパスティーシュ。東西大学推理研究部の片倉智樹(俺)が部長・里佳の殺害を計画する 「天使と悪魔のチマ」(辻真先)。終焉神アルタルカが猫に憑依した驚愕SF 「神の両側で猫を飼う」(似鳥鶏)。「黒猫」 ではなかったり、そもそも猫でなかったり、実態のないメタファーだったりする。妻子に逃げられたバツイチ中年男が猫を飼うメタ掌編 「メイにまっしぐら」(柾木政宗)。ジーン・ウルフの 「キティ」 みたいな 「ミミのお食事」(真下みこと)は黒いユーモアだが、宮部みゆきの『火車』みたいな 「ササミ」(原田ひ香)、「黒猫」 ではないらしい 「登美子の足音」(矢部嵩)や 「独り暮らしの母」(三津田信三)は心底怖い。表紙を飾るメインキャラは 「黒猫ダニット」(Dunit)にゃん。

  • b イニシャルはS・S(2025-06-21)blog
  • 様々なテーマで読者アンケートを募り、集計してランク付けする「be Ranking」(朝日新聞土曜版)。「好きなアルファベットは?」(be Ranking 2025・6・7)は苦し紛れのネタ切れのようで、単なる記号(英字や数字)に意味を持たせるところが意外に面白い。ランキング1位はダントツで 「A」、2位 「M」、3位 「K」、4位 「S」、5位 「T」 の順だった。「Aは一番、1位を宿命づけられた存在だ」 と書かれているけれど、なぜか読者のコメントが紹介されていない 「S」 の方が上位ではないか。一読者としては 「S」 を推したい。拙ブログ遍歴(So-net → SS → Seesaa)もブログ・タイトル(sknys-synks)も 「S」 なのだから。Sufjan Stevensのアルバム《Carrie & Lowell》(Asthmatic Kitty 2025)が絶好のタイミングでリイシューされた(その10日後に、Sly Stoneが亡くなってしまった)。オリジナル(11曲)に、デモや未発表ヴァージョンなど7曲を追加収録した 「10th Anniversary Edition」 は全18曲・83分(2CD・2LP)、ハード・スリップケースに見開き紙ジャケとブックレット(40頁)を同梱。国内流通仕様(輸入盤)の方が直輸入盤よりも安い。「Pitchfork」 の評価は10点満点!

  • b ナージャ・トロコンニコワ(2025-06-28)books
  • プッシー・ライオットはロシアW杯決勝戦(2018)に女性警官のコスプレでピッチに乱入して、「フランス代表FWエムバペとハイタッチ」 したフェミニスト・パンク集団である。2012年モスクワの救世主ハリストス大聖堂(女人禁制の祭壇前)でゲリラ・パフォーマンス 「パンク・プレイヤー」 を行った創立者ナージャ・トロコンニコワは 「宗教的憎悪を動機とするフーリガン(暴徒)行為」 の罪で、2年間の投獄を強いられた。フェミニスト、アナーキスト、反権威主義者、反プーチン・反トランプのアクティビスト、文化労働者(カルチュアル ・ワーカーズ)のナージャはミシェル・フーコー、マイケル・スタイプ、フリーダ・カーロ 、バーニー・サンダース、ジャン=リュック・ゴダール、パブロ・ピカソ、ナジェージダ・マンデリシュターム、ドストエフスキー、コックニー・リジェクツ、ピョートル・クロポトキン、X-レイ・スペックス、ノーム・チョムスキー、アーシュラ・K・ル=グウィンなどのエピグラフと 「10のルール」 を掲げて読者を挑発する。『読書と暴動』(ソウ・スウィート ・パブリッシング 2024)はアクティビストになるための 「実践と哲学の書」 である。

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    posted by sknys at 00:23| 東京 ☁| Comment(2) | s k n y s - l a b | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
    この記事へのコメント
    黒猫の出てくるお話、一つ知ってます。
    「左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~」
    ネットのファンタジー小説ですが、主人公の使い魔が黒猫さんでした。
    まだ連載中ですが、結構気に入ってます。
    Posted by ぶーけ at 2025年06月30日 21:14
    魔女の使い魔は黒猫と決まっているらしいです。
    「書店猫ハムレット」 「通い猫アルフィー」 など、
    ネコが窮地に陥った主人公を救うパターンも少なくありません。
    ケリー・リンクの 「白猫の離婚」 はショート・ショートの黒猫たちを一掃する衝撃童話(ホラー?)でした。
    「ドラえもん」 の元ネタがハインラインの『夏への扉』だったとは知らなかったなぁ。
    ジンジャーエールが好きなピートにゃんも主人公を救けるのよね^^
    Posted by sknys at 2025年07月01日 12:03
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