2024年06月26日

スニーズ・ラブ 113

  • b 忍法七番勝負(2024-06-01)comic
  • 『忍法十番勝負』(秋田書店 1966) は月刊マンガ誌 「冒険王」(1964)に掲載された連作 ・忍者コミック。10人の人気マンガ家(堀江卓、藤子不二雄A、松本零士、古城武司、桑田次郎、一峰大ニ、白土三平、小沢さとる、石ノ森章太郎、横山光輝)が大阪城の抜け穴を記した絵図面を忍者たちが奪い合う「巻物争奪戦」というテーマで競作している。全10話は独立した短篇(28~34頁)で、「二番〜三番勝負」(藤子不二雄 A〜松本零士)、「五番〜六番勝負」(桑田次郎〜一峰大二)を除き、必ずしも10人がリレー方式で1つのストーリを描き継いでいるわけではない。「伊賀の影丸」 に瓜二つの伊賀丸が主人公の 「八番勝負」(小沢さとる)は笑える。「九番勝負」(横山光輝)は抜け穴を見つける目的で大阪城に忍び込んだ3人の伊賀忍者(幻妙斉、夢麿、内膳)を霧隠才蔵と猿飛佐助が迎え撃つ。「七番勝負」(白土三平)は野犬と野鳥を操る2人の忍者・犬万と宿鳥の対決。勝利した犬万は亀の甲羅のように角質化した皮膚を持つガンダメに敗れるが、真の主人公は忍犬シジマだった。忍者同士の凄惨な死闘とは裏腹に、ホッコリしたラスト・カットに心温まる。「十番勝負」 の白眉である。

  • b マンガの神様の父は?(2024-06-08)books
  • 『神様のお父さん』(本の雑誌社 2023)は「本の雑誌」 に連載中のエッセイ『ユーカリの木の蔭で』(2020)の続編(67篇)で、「明日の友」(婦人之友社)の連載 「本と幸せ」(16篇)と巻末あとがき風の「北村薫の図書室」 と題した「おみやげの鉛筆」も収録されている。小説、随筆、映画、落語、演劇、TVなどの知られざるトリヴィアを本の中から見つけて、驚いたり喜んだりする。ミステリ作家らしく、肝腎肝要なことは掉尾に書いたり(敢えて書かなかったり?)するところが心憎い。謎めいた表題は手塚治虫の父親・手塚粲(ゆたか)氏のこと。表紙カヴァに描かれた微睡む茶トラに惹かれて読んでみましたが、ネコに纏わるエピソードは松本英子の『かけ湯くん 旅する温泉漫画』(河出書房新社 2018)を紹介した 「いい湯だな」 と三島由紀夫が大の猫好きだったという 「ひとつの顔」 ぐらいしかなかった。動物行動学者デズモンド・モリスの 「ねことば」 を捩れば 「作家は猫が好き、兵士は犬が好き」

  • b アキラックス(AQUIRAX UNO)(2024-06-15)art
  • 「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」(東京オペラシティ アートギャラリー 2024)に行って来た。入場券がスーパーのレシートみたいなペラペラな感熱紙(QRコード)でなかったのは嬉しい。日本を代表するイラストレーター、グラフィック・デザイナーの過去最大規模の展覧会で、50年代から20年代まで70年以上に渡るイラスト、ポスター、絵本、書籍、アニメーション、絵画、舞台美術など、900点超の作品を展示。殆ど撮影可だったが、ガラス張りの額装なので、コラージュ〈澁澤龍彦考〉(1996)、壁張りポスター、チェシャ猫仮面(可愛い!)などを撮った。T.S. エリオットの『オールド・ポッサムの抜け目なき猫たちの詩集』(球形工房 2023)のイラストが展示されていないのは残念。皆川博子先生とコラボした『絵小説』(集英社 2006)や東雅夫監修の怪談えほん『マイマイとナイナイ』(岩崎書店 2011)の原画は出品されていた。アニメーション映画〈⽩い祭〉(1964)は見れたが、4階で公開されていた〈お前とわたし〉(1965)と〈午砲(ドン〉(1966)は見逃した。

  • b サムシング(2024-06-22)music
  • Julia Holterの6thアルバム《Something In The Room She Moves》 (Domino 2024) はGeorge Harrison(The Beatles)の名曲〈Something〉の歌詞を想わせるタイトルだった。パンデミック中に妊娠して娘シモーネが生まれ、その直後に亡くなった甥カルダー・パウエル(18歳)に捧げられている。生まれたばかりの娘にインスパイアされたアルバムは子供みたいな遊び心を表現することに焦点を合わせたという。ポルタメント(グリッサンド)による陽気で寛いだ伸縮自在の子供部屋。ウーリッツアー、フレットレス・ベース、フルート、亡き祖父のラップ ・スチール。「自分の快適ゾーンから、未知の遊戯と混沌に連れ出される」〈Sun Girl〉、歪んだアカペラ・コーラスの〈Meyou〉 、カラフルな巨大スカートが波打つMVも鮮烈だった〈Spinning〉など、全10曲・54分。カヴァ・アートの 「女子レスリング」 は友人のクリスティーナ・クォールズ(Christina Quarles)が描いている。見開き紙ジャケ仕様、歌詞ブックレット(12頁)付き。

  • b リサイクル 「本の雑誌」(2024-06-29)library
  • O**図書館の2階に大量のリサイクル図書が放出されていた。少なく見ても、200冊以上の雑誌が整然とワゴンに並んでいる。ファッション、婦人、スポーツ、写真、音楽、オーデ ィオ、パソコン、文芸、洋雑誌など、オールジャンルで選り取り見取り。「1人5冊まで」 という貼り紙があるけれど、10冊以上のファッション誌をナップサックに詰め込んで密かに持ち帰る猛者女もいた。入手した 「本の雑誌」(2019年1月号)は編集部合議制の「2018年度ベスト10」よりも、『夢の猫本屋ができるまで』『鼻行類』『飛ぶ孔雀』など、「読者が選んだベスト1」 の方が面白い(読者の投稿を選んだのも編集者なのだが)。毎年チェックしている 「私のベスト3」 も愉しい。5年前とはいえ、「今月書いた人」 目黒考二(池上冬樹・北上次郎)、西村賢太、坪内祐三は既に他界してしまった。驚いたのは4月に読んだ北村薫の連載エッセイ「ユーカリの木の陰で」が天然女優・浅田美代子の「たれ流し温泉」から始まる「いい湯だな」だったこと。松本英子の『かけ湯くん』を今読んでいるところなのだ。

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    忍法十番勝負

    忍法十番勝負

    • 著者:堀江 卓 / 藤子 不二雄 A / 松本 零士 / 古城 武司 / 桑田 次郎 / 一峰 大ニ / 白土 三平 / 小沢 さとる / 石ノ森 章太郎 / 横山 光輝
    • 出版社:秋田書店
    • 発売日:1966/09/26
    • メディア:コミック(サンデーコミックス)
    • 内容:徳川家康の大阪城総攻撃を前に、影の存在たる忍者たちが徳川方も豊臣方も入り乱れ、とある巻物の壮絶な争奪戦を展開する活劇コミックス。その巻物には攻め手側、守り手側いずれにとっても戦いの勝敗を左右する大阪城の抜け穴が絵図面として記されていたのだ


    神様のお父さん ユーカリの木の蔭で

    神様のお父さん ユーカリの木の蔭で

    • 著者:北村 薫
    • 出版社:本の雑誌社
    • 発売日:2023/11/25
    • メディア:単行本
    • 目次:動作 / 天狗になった話 / それとこれ / 予選 / 鷗外の実験 / 話の名人 / 徳田秋声は、こんな風に‥‥ / 和田芳恵は、顔を赤らめて‥‥ / 運命 / 渾身の一冊 / もの言う帯 / 泉鏡花と罪人の門 / 川端康成の突進 / rolling stoneが聞きたい / 海の響をなつかしむ / お疲れさま / 泣く少女 / ついに見つけた​​馬鹿大将いい湯だな / やめられないとまらない / これは...


    宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO

    宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO

    • アーティスト:宇野 亞喜良
    • 会場:東京オペラシティ アートギャラリー
    • 会期:2024/04/11~2024/06/16
    • 主催:公益財団法人 東京オペラシティ文化財団 / 朝日新聞社
    • 内容:宇野の仕事を振り返る大型個展は、2010年刈谷市美術館で開催されて以来14年ぶり、東京では初めて開催します。本展は、刈谷市美術館での個展よりもさらに出品点数を増やし、900点を超える作品群によって膨大な宇野の仕事の全貌を紹介します


    オールド・ポッサムの抜け目なき猫たちの詩集

    オールド・ポッサムの抜け目なき猫たちの詩集

    • 著者:T. S. エリオット(Thomas Stearns Eliot)/ 宇野亞喜良(画)/ 佐藤 亨(訳)
    • 出版社:球形工房
    • 発売日:2022/10/26
    • メディア:単行本
    • 内容:ミュージカル「キャッツ」の原作として知られる世界一有名な猫詩集が、日本を代表するイラストレーター・宇野亞喜良氏の魅惑のオリジナル・カラー挿絵と、エリオット研究の泰斗・佐藤亨氏による生き生きとした訳文を得てよみがえる?


    絵|小|説

    絵|小|説

    • 著者:皆川 博子 / 宇野 亞喜良(画)
    • 出版社:集英社
    • 発売日:2006/07/26
    • メディア:単行本
    • 目次:赤い蠟燭と‥‥ / 美しき五月に / 沼 / 塔 / キャラバン・サライ / あれ / 引用文献 / 初出誌 「小説すばる」


    マイマイとナイナイ

    マイマイとナイナイ

    • 著者:皆川 博子 / 宇野 亜喜良(絵)/ 東 雅夫(編)
    • 出版社:岩崎書店
    • 発売日:2011/10/07
    • メディア:大型本(怪談えほん 2)
    • 内容:皆川博子と宇野亜喜良コンビによる、美しく、怖い物語。 マイマイは、小さい小さい弟、ナイナイをみつけた。マイマイは、ナイナイをこわれた自分の右目にいれて、そっと右目をあけてみる。すると、そこには不思議な世界がひろがっていた


    Something In The Room She Moves

    Something In The Room She Moves

    • Artist: Julia Holter
    • Label: Domino
    • Date: 2024/03/22
    • Media: Audio CD
    • Songs: Sun Girl / These Morning / Something In The Room She Moves / Materia / Meyou / Spinning / Ocean / Evening Mood / Talking To The Whisper / Who Brings Me


    本の雑誌 2019年1月号(No.427)

    本の雑誌 2019年1月号(No.427)

    • 特集:本の雑誌が選ぶ2018年度ベスト10
    • 出版社:本の雑誌社
    • 発売日:2018/12/11
    • メディア:雑誌
    • 内容:新春恒例、年間ベスト10の季節が今年もやってきた! というわけで、「本の雑誌」1月特大号は、年に一度のベスト10特集号。本の雑誌が選んだ2018年度ノンジャンルのベスト10に、鏡明のSFベスト10、池上冬樹のミステリーベスト10、縄田一男の時代小説ベスト10、佐久間文子の現代文学ベスト10、栗下直也のノンフィクションベスト10、そして北...


    旅する温泉漫画 かけ湯くん

    かけ湯くん 旅する温泉漫画

    • 著者:松本 英子
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:2018/09/22
    • メディア:単行本
    • 内容:『旅の手帖』連載中の漫画「かけ湯くん」がオールカラーで一冊に。温泉を愛する猫のかけ湯くんが温泉と町歩きを旅情たっぷりに紹介
    ラベル:sknys-lab NINJA aquirax
    posted by sknys at 00:00| Comment(0) | s k n y s - l a b | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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