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2024年04月21日

子猫のリル・バブ



  • ◆ My Lovely Cat!（Joyful Noise 2022）Deerhoof
    • ディアフーフのアルバム《Miracle-Level》（2023）に収録されている先行シングル〈ボクの愛猫〉は黒地に白抜きで、バンド名とタイトル ｢バンド初の全日本語歌詞アルバム "奇跡のレベル" から発売間近！｣ というキャッチ・コピーとネコのイラストが描かれている。この曲は2019年12月1日に亡くなったリル・バブ（Lil BUB）ちゃんに捧げられているが、メンバーたちが作詞・作曲した時にはインターネットで有名な「永遠の子猫」のことも、飼主についても何も知らなかったという。彼女はネットの写真や動画だけでなく、映画 ｢Lil Bub & Friendz｣（Vice Media 2013）にも主演している。｢徹子の部屋｣ みたいなトークTV番組 ｢Lil BUB's Big SHOW｣（2013）の司会も務めていたし、アルバム《Science & Magic》（2015）もリリースしているのに。元飼主のマイク ・ブリダヴスキー（Mike Bridavsky）がプロデュースした《奇跡のレベル》は19作目にして、レコーディングの全てを1つのスタジオで行なったディアフーフ初のアルバムである。

  • ◆ MANANA SERA BONITO（Universa 2023）Karol G
    • 太陽、月、椰子、蝶々、蜜蜂、虹、ハート、人魚、黒猫、花、骸骨、サクランボ、パイナップル、キノコ、蝸牛、蛇、小虎、鮫、バナナなど、カラフルなイラストが描かれている。コロンビアのSSWカロル・ヘ（Karol G）の4thアルバム・カヴァは可愛い（歌詞ブックレットにもカラー・イラストが満載！）。ソファに横たわる半裸の黒人男性の股間に旅客機の模型が屹立する3rdアルバム《KG0516》（2021）とは大違いである。このタイトルは彼女の両親が ｢Karol G｣ という名前で、初めてメジャー契約書にサインした日付（2006年5月16日）に由来する。スペイン語タイトル（Mañana Será Bonito）は ｢明日はきっと良い日になるよ｣（Tomorrow Will Be Pretty）という意味。何も良いことがなかった時に彼女が自分自身に言い聞かせ続けたフレーズだという。インタヴュー（Rolling Stone 2023･2･10）で、《私はキャリアの中で最高の瞬間を経験していましたが、個人的には自分自身からも友人からも切り離されていた。不幸ではなかったけれど、幸せでもなかった》と語っている。

  • ◆ IMAGINE THIS IS A HIGH DIMENSIONAL SPACE OF ALL POSSIBILITIES （Border Community 2023）James Holden
    • ジェームス・ホールデン（James Holden）は英デヴォン・エクセター生まれのDJ・エレクトリック・ミュージック・プロデューサー。10年ぶりの3rdアルバム・カヴァにはネコ、ゾウ、女性、異形の生物たちが互いに肩を組み、円卓を囲んで瞑想している。ミュージシャンでもあるホルヘ・ヴェレス（Jorge Velez）によるイラスト・ブックレット（12頁）は各曲（12曲・65分）に対応する。同じようなバケモノたちの集会であっても、オインゴ・ボインゴの気味悪い骸骨や奇怪な仮面ような禍々しさはない。パステル・カラーの淡い色彩で描かれた、動植物をメタモルフォーゼさせたような摩訶不思議なエイリアンたち（頭が空洞の鍵のような人物が主人公なのか？）は佐藤史生のSFファンタジーの登場キャラクターを想わせなくもない。｢ここがあらゆる可能性を秘めた高次元スペースだと想像して下さい｣ というアルバム・タイトル通り、リスナーの想像力を刺激する異境の音楽世界に誘われる。

  • ◆ FIRE DOESN'T GROW ON TREES（A 2022）The Brian Jonestown Massacre
    • アントン・ニューコム（Anton Newcombe）率いるBJMは1990年米サンフランシスコで結成されたサイケデリック・ロック・バンド。バンド名は ｢27クラブ｣ のメンバー、ブライアン・ジョーンズ（Brian Jones）と1978年にカルト指導者ジム・ジョーンズ（Jim Jones）が ｢ジョーンズタウン｣（Jonestown）と呼んだガイアナの入植地で起こった大量虐殺事件（the Jonestown Massacre）を組み合わせた鞄語である。｢火は木には生らない｣ というアルバム・タイトルは ｢Money doesn't grow on trees｣（金のなる木はない）のモジリだと思うけれど、巨大灰色ネコ（胸元にアリゾナ州ルート66のステッカーが貼ってある）と高層ビルのコラージュ・カヴァ（ネコにビルは生えない？）との関連は不明だ。｢何かまたは誰かは木に生えない｣（something or someone does not grow on trees）という言い回しは ｢非常に珍しくて、手に入れるのが難しい｣ ことを意味するという。〈#1 Lucky Kitty〉という曲を含む全10曲・37分。紙ジャケ仕様、歌詞はインナーとスリップケースに記載。

  • ◆ GREAT UNWANTED（Sony 2007）Lucky Soul
    • ラッキー・ソウル（Lucky Soul）は英グリニッジで結成された6人組ポップ・バンド。1stアルバム・カヴァは椅子に座ったAli Howard（ヴォーカル）を前景に、5人の男性メンバーがテーブルを囲んでいるが、日本盤 ｢恋はゴージャスに｣ は黄色いウィグ（右耳に青い蝶々が髪飾りのように留まっている）を被ったネコ娘に変更されている。｢ラッキー・キティ｣ というバンド名ならばまだしも、なぜネコなのかは不明である。Andrew Laidlaw（ギター）はバンドについて、《小さな町の夢想家たちが奏でるソウル・ミュージック。深南部から出て来たフリはしない》と語っている。全15曲・54分（ボーナス・トラック2曲収録）。オリジナル歌詞ブックレット（12頁）、日本語解説・対訳（12頁）、｢Lucky Soul 恋はゴージ ャスに / ニュー・レトロ・ポップなデビュー・アルバム｣ と記載された帯付き。｢中古特価コーナー｣ から発掘したのだが、半額セール中だったので、ワンコイン（¥50！）だった。

  • ◆ BEST O' BOINGO（MCA 1991）Oingo Boingo
    • オインゴ・ボインゴ（Oingo Boingo 1979-1995）は米カリフォルニアのニュー・ウェイヴ・バンドである。フロントマンのダニー・エルフマン（Danny Elfman）は当時ネコと髑髏に取り憑かれていたらしい。2ndアルバム《Nothing To Fear》（A&M 1982）のカヴァ ・イラストには2本足で直立している猫エイリアンみたいな黒斑灰色のネコが描かれていたし、5thアルバム《Dead Man's Party》（MCA 1985）は骸骨たちのマッド・パーティだった。彼らの旧譜はリマスター・リイシュー（Rubellan Remasters 2021）されているが、ベスト盤は再発されていないようだ。ジュエルケース仕様の国内盤CDにはオリジナル・ブックレット（12頁）と日本語解説・歌詞ブックレット（16頁）が付いている。アンソールの仮面を想わせる異形の魑魅魍魎たちが蝟集する奇怪なアルバム・カヴァの真下から、デビュ ーEP《Oingo Boingo》（I.R.S. 1980）から紛れ込んだと思われる〈ルイス・ウェインの猫〉が顔を覗かせる。稲妻に打たれて帯電したかのようなエレクトリカル・キャットだ。

  • ◆ ELEPHANT HOME（Wasabi 2005）Manuel Bienvenu
    • 某レコード店の新着中古棚で「猫ジャケ」を見つけた。ジュエルケース仕様の国内盤（未開封CD）だった。アルバム・カヴァの左上部に小さな子猫が写っている。真っ白い空間を翔けているように見えなくもない。まるで女性写真家イーラ（Ylla）の「夢のイメージ」みたいに空中浮游しているようだった。マニュエル・ビアンヴニュ（Manuel Bienvenu）はパリを拠点にフランスと日本を行き来して音楽活動しているSSW、マルチ奏者である。Jean-Michel Pirès（ドラムス）とRobert Wyattの妻Alfreda Benge（作詞）、ミュージカル・ソーやトランペット奏者なども参加しているが、殆どの楽器（ピアノ、ギター、パーカッシ ョン、ハーモニウム、グロッケンシュピール、オルガン、メロディカ、ミニモーグ、ウーリ ッツァーなど）を自ら演奏している。動物写真家の岩合光昭さんによると、イーラの飛び跳ねる子猫たちは高く放り上げたネコが落下する瞬間を狙って撮っているという。

  • ◆ NURSERY RHYMES（Karaoke Kalk 2015）Bill Wells & Friends
    • スコットランドのBill Wells（ピアノ）が企画した「マザー・グースの唄」には総勢20名のミュージシャンが参加。バッキングはYo La Tengoの3人、Georgia Hubley（ドラムス）、Ira Kaplan（ギター）、James McNew（ベース）で、Karen Mantlerの〈Three Blind Mice〉、Syd Strawの〈Oranges And Lemons〉、Annette Peacockの〈Hey Diddle Diddle〉、Amber Papini（Hospitality）の〈Humpty Dumpty〉、Isobel Campbell（Belle & Sebastian）の〈Rock A Bye Baby〉、Norman Blake（Teenage Fanclub）の〈Ride A Cock Horse〉など、全15曲・35分。マツザキ・サトミ（Deerhoof）が日本 語で歌う〈きらきらぼし〉（Twinkle Twinkle Little Star）にはGreg Saunier（パーカッション、ドラムス）も参加。少女、犬、鳥、猫たちが手を繋いで輪になって踊るアルバム・カヴァはインディ・ロック界の切り絵職人Jad Fair（Half Japanese）が手掛けている。

  • ◆ SWINGING STARS（Innovative Leisure 2023）Mapache
    • マパーチェ（Mapache）はLA郊外ラ・カニャーダの高校時代からの友人サム・ブラスッチ（Sam Blasucci）とクレイ・フィンチ（Clay Finch）によるフォーク・ロック・デュオ。ダン・ホーン（Dan Horne）のペダルスチールを起用した5thアルバムはフォークやカントリー、70年代SSWなどのレイドバックした心象風景を思い出させる。ソロ・アルバム《Off My Stars》（Innovative Leisure 2023）をリリースしたSam Blasucciの脱力系ヴォーカルも魅力的だ。陽溜まりで微睡むネコの見ている夢の中の音楽のように聴こえる。米インデ ィアナ州インディアナポリス生まれの画家ナサニエル・ラッセル（Nathaniel Russell）の描いたカヴァ・イラストの黒猫は図案化されている。スフィンクスのような存在感で、レコ ード店を訪れた音楽愛好家たちを招き猫のように魅惑する。｢猫ジャケ買い｣ なのだった。

  • ◆ THE DECLINE AND FALL OF HEAVENLY（Sarah 1994）Heavenly
    • ペーパークラフトの神殿に鎮座する紙冠のチビ猫は大島弓子の ｢草冠の姫｣（1978）を思い出してしまうほど可愛いらしい。ヘヴンリィ（Heavenly）は1989年に英オックスフォードで結成された5人組のインディ・ポップ・バンド。可愛い子猫ジャケと ｢天国の衰退と没落｣ という不穏なタイトルの落差に戸惑ったが、4thアルバム《Operation Heavenly》（Wiiija 1996）の直前に、Amelia Fletcher（ヴォーカル、ギター）の弟Mathew（ドラムス）が自殺したことで、バンドは解散を余儀なくされてしまった（2023年5月に再結成した）。《この、草をかたどった冠を頭にのせた仔猫の可愛らしさは、どうしたものだろう?! 英国のインディ・レーベル発ヘブンリィのサウンドは、私にはちょっと落ちつかないシャカシャカしたギターポップ。それでもこの猫の魅力には勝てなくて買ってしまいました！ うーん、たまりません》とイラストレーターの高田理香は「猫のレコード」の中で紹介していたけれど。

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    • お気に入りの「猫ジャケ」10枚を紹介するネコード・シリーズの第15集です＾＾;

    • アルバム・タイトルの ◆ をクリックすると、拡大された ｢猫ジャケ｣ が表示されます

    • 記事タイトルの右に一覧カタログのリンク・ボタン（肉球アイコン）を付けました

    • リル・バブちゃんについては〈マジカル・スペース・キャット〉を参照して下さい
    • ｢マニュエル・ビアンヴニュ｣（Manuel Bienvenu）のバイオを参照しました
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    Manana Sera Bonito

    Manana Sera Bonito

    • Artist: Karol G
    • Label: Universal Latino
    • Date: 2023/02/24
    • Media: Audio CD
    • Songs: Mientras Me Curo Del Cora / X Si Volvemos / Pero TÚ / Besties / Gucci los Paños / TQG / Tus Gafitas / Ojos Ferrari / Mercurio / Gatúbela / Kármika / Provenza / Carolina / Dañamos la Amistad / Amargura / Cairo / Mañana Será Bonito


    Fire Doesn't Grow On Trees

    Fire Doesn't Grow On Trees

    • Artist: The Brian Jonestown Massacre
    • Label: Cargo UK
    • Datel: 2022/6/24
    • Media: Audio CD
    • Songs: The Real / Ineffable Mindfuck / It's About Being Free Really / Whats In A Name? / Silenced / Before And Afterland / You Think I'm Joking? / #1 Lucky Kitty / Wait A Minute (230 To Be Exact) / Don't Let Me Get in Your Way


    Elephant Home

    Elephant Home

    • Artist: Manuel Bienvenu
    • Label: Wasabi
    • Date: 2005/02/09
    • Media: Audio CD
    • Songs: Tango On The Sidewalks / Suspended There / Self Portrait Takeaway / How We Forgot To Steal The Queen's Crown / Speechloss / Dynamo / A Catbird And The Cage / Mécanique Cantique / Science-Fiction For GrandPa / La Musique Il Faut Qu'elle s'arrête


    Best O'Boingo

    Best O'Boingo

    • Artist: Oingo Boingo
    • Label: MCA
    • Date: 1991/09/17
    • Media: Audio CD
    • Songs: Dead Man's Party / When The Lights Go Out / Gratitude / Skin / Flesh 'N Blood (Single Remix) / Not My Slave / Stay / Sweat / No Spill Blood / Out Of Control / Weird Science / No One Lives Forever / Wild Sex (in the Working Class) / Just Another Day / Who Do You Want ...


    Swinging Stars

    Swinging Stars

    • Artist: Mapache
    • Label: Innovative Leisure
    • Date: 2023/04/07
    • Media: Audio CD
    • Songs: Sentir / French Kiss / What A Summer / Hey / Reflecting Everything / Sammy Boy / Home Among The Swinging Stars / Midnight / Encinal Canyon / Ghosts / Amazing / People Please / Rainbow Song / Where'd You Go
    ラベル：lil bub Deerhoof music cats cradle necord
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    posted by sknys at 00:00| Comment(0) | c a t 's c r a d l e | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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