「大洋レコード」は東京・神楽坂のセレクトCDショップ。主にブラジルやアルゼンチン音楽の直輸入CD・LP・DVDなどを販売・通販している。2005年当時の旧店舗は東京メトロ東西線飯田橋駅に近いビルの4階にあった。2009年に少し離れた1階の店舗へ移転し、2011年には西に約300m離れた場所へ移った。神楽坂を駆け登るように飯田橋からは遠く離れ、現店舗は東西線神楽坂駅(2出入口)から徒歩1分のところにある。サイトのマップには記載されていないが、飯田橋駅よりも丸ノ内線江戸川橋駅の方が距離的には近い(住所は新宿区矢来町139)。南米音楽中心だが、ディスプレイされているアルバムのクオリティは高い。新譜だけでなく、ソールドアウトした旧譜も再入荷することが多い。買い逃したり、探していたアルバムが見つかるかもしれない。店主もフレンドリーなので、つい話が弾んで長居してしまう。帰りに
「元祖五十番神楽坂本店」で、肉まんを買うのも愉しみの1つです。
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◎ Little Electric Chicken Heart(Risco 2019)Ana Frango Eletricoブラジル・リオ生まれの女性SSW、アナ・フランゴ・エレトリコ(Ana Frango Eletrico)の2ndアルバム。彼女のヴォーカルとギター、Antonio Neves(ドラムス、トロンボーン、トランペット、ピアノ、ローズ)、Guilherme Lirio(ドラムス、ドラム・マシン、ギター、ベース、鉄琴、 ラップ・スティール、ヴォーカル)、Vovo Bebe(ベース、低音オルガン、ヴォーカル)に、Alberto Continentino(シンセ)、Marcelo Costa(ドラムス)、Tim Bernardes(コーラス、オルガン)など、多彩なゲストが参加している。厳かなピアノと男声コーラスに、可愛らしいヴォーカルが加わる〈Saudade〉。場末の酒場のように騒がしい〈Se No Cinema〉、狂乱のサンバ・ホッキ〈Tem Certeza?〉、甘ったるくて破廉恥なバラード〈Chocolate〉など‥‥全9曲・30分。デジパック仕様、6つ折りポスター付き。性別不明のアルバム・カヴァ
(ピンボケどアップ写真)は小さなCDでもインパクトありすぎ!
◎ <atras/alem>(Risco 2019)O Ternoチン・ベルナルデス(Tim Bernardes)が率いるサンパウロのロック・トリオ、オ・テルノ(O Terno)の4thアルバム。ギター、ベース、ドラムスに、ヴァイオリン、トロンボーン、トランペット、ヴィブラフォン、グロッケンシュピール、フリューゲルホルン、サックス、フルートなどを配した優雅なサウンドとTim Bernardesの柔和なヴォーカルはソロ・アルバム
《Recomecar》(2017)の延長線上にある。坂本慎太郎(日本語スピーチ&ヴォーカル)とDevendra Banhart(ヴォーカル)がゲスト参加した
〈Volta E Meia〉。Ana Frango Eletrico、Luiza Lian、Maria Beraldo、Maria Cau Levy、Turipa Ruizの女声コーラスが華を添える〈Bielzinho/Bielzinho〉。ドラマティックなピアノ曲〈Profundo/Superficial〉など‥‥全12曲・50分。デジパック仕様、6つ折り歌詞カード付き。デジパックの右上に小さな丸い穴が刳り抜かれていて、インナーに挟み込む歌詞カードの向きによって、橙、青、赤、白色に変化するギミックも愉しい。
◎ Casas(Independente 2018)Rubelフーベル(Rubel Brisolla)はブラジル・リオ(ボルタ・レドンダ)生まれの男性SSW。大学で映画を学び、デビュー・アルバム
《Pearl》(2013)に収録されている
〈Quando Bate Aquela Saudade〉のPVを自ら監督している。2ndアルバムは優雅なストリングスとホーンセクションの〈Intoro〉で幕を開ける。ネオアコ系にも相通じるギター弾き語りタイプで、穏やかな午後の憩いのような柔らかいヴォーカルとサウンドは古いフィルム映像を見るような郷愁に満ち溢れている。あのルクセンブルグ王(The King Of Luxembourg)を想わせるノスタルジックな
〈Colegio〉〈Cachorro〉、バチーダ奏法のサンバ〈Casquinha〉、弾き語りワルツ〈Explodir〉、ラッパーのEmicida、Rincon Sapienciaと共演した〈Mantra〉と〈Chiste〉も違和感なく聴ける‥‥イントロと間奏曲3曲を含めた全14曲・48分。デジパック仕様、歌詞ブックレット(12頁)付き。
◎ Licao #1 Moacir(Tratore 2015)Quartabeクアルタベー(Quartabe)は女性4人、Joana Queiroz(テナー・サックス、クラリネット、クラローネ)、Maria Beraldo(クラリネット、クラローネ)、Maria Portugal(ドラムス)、Ana Karina Sebastiao(ベース)と黒一点Chicao(キーボード)のクインテット(現在はベースが抜けて、4人編成になっている)。4年B組は「モアシール・サントス・フェスティヴァル」(2014)で、Moacir Santosの楽曲を再解釈して演奏して欲しいと依頼されたことからスタートしたという。ショーロを脱構築したインスト・ジャズなのかと思っていると、男女コーラス入りの〈Suk Cha〉や歌入りの〈Chamada〉、アナログ・シンセが跳梁跋扈する〈Coisa #5〉など、意表を突く展開で先が全く読めない。全12曲・55分。紙ジャケ仕様の新装盤。CD-Rだった2ndアルバム
《Licao #2 Dorival》(2018)や戦隊ヒーロー・カヴァ(!)の5曲入りEP
《Depe》(2017)もCDでリリースして欲しい。
◎ Nocturno Mundo(Bau 2013)Florencia Oteroアルゼンチン・ブエノス・アイレス生まれの女性SSW、フロレンシア・オテロ(Florencia Otero)のデビュー・アルバムはJoni Mitchellのカヴァ集。《Blue》(1971)から5曲、《Court And Spark》(1974) から2曲、《Song To A Seagull》(1968)、《Ladies Of The Canyon》(1970)、《Clouds》(1969)、《Mingus》(1978)から1曲‥‥初期のアルバムから選曲されている。ピアノ、ギター、コントラバス、サックス&クラリネット、ドラムスというジャズ・クインテット編成で、Florenciaのヴォーカルもジャズに傾倒していた頃のJoniを髣髴させる。原曲をジャズ風にアレンジするだけでなく、ピアノの伴奏のみで歌われる〈Woodstock〉、フリー・ジャズとポエトリー・リーディングの〈Both Side Now〉、カホン
(Cajón)とヴォイス・パフォーマンス(Florencia、Barbara Togander、Melina Moguilevsky)の
〈The Dry Cleaner From Des Moines〉など、斬新な試みもある。全11曲・54分。ジュエルケース仕様、歌詞(一部抜粋)ブックレット(20頁)付き。
◎ Acrilico(YB Music 2017)Nina Beckerニーナ・ベッケル(Nina Becker)はリオ生まれの女性SSW。 大所帯バンド、Orquestra Imperialのヴォーカルとして知られるが、映画芸術監督としても活動している。2枚同時にリリースされた赤と青、
《Vermelho》《Azul》(2010)に続く3rdアルバムはモノトーンの色合い。Rafael Vernet(ピアノ)、Pedro Sa(ギター)、Alberto Continentino(ベース)、Tutty Moreno(ドラムス)という4人編成。Moreno VelosoやKassinなどがゲスト参加し、彼女と共作している。Everson Moraesのトロンボーンが気怠く鳴る〈Acrilico〉。Luca Raeleのクラリネットが縦横無尽に跳ね回る〈Na Quebrada〉。Negro Eversonのオフィクレイド
(Ophicleïde)が低く響く、Negro Leo(ギター)の提供曲〈Caramelo da Nostalgia〉。「すべての子供はきれいです / 皆さんはかわいいです」 という日本語で、お皿をナイフで叩くMoreno Velosoとデュエットする
〈Kawaii〉‥‥ジャズ、ロック、ポップスと実験性が融合した全12曲・46分。ジュエルケース仕様、12折り歌詞・ポスター付き。
◎ Recomecar(Independente 2017)Tim Bernardesサンパウロのロック・バンド、オ・テルノ(O Terno)を率いるチン・ベルナルデス(Tim Bernardes)の1stソロ・アルバム。Timのギター、ピアノ、オルガン、 メロトロン、鉄琴(Metalofone)、ドラムス、パーカッションに、ヴァイオリン、クラリネット、コントラバス、サックス、ハープなどが優雅に奏でられ、繊細なヴォーカルを優しく包み込む。極上の上澄みスープのようにソフィスティケートされたブラジル産のソフト・ロック。ロマンティックでノスタルジックなサウンドに魅了される。オープニングのピアノ・インスト曲がラストの
〈Recomecar〉(歌入り)で「再開」されるアルバム構成も洒落ているし、米インディーズのSufjan StevensやFleet Foxesなどを想わせる共時性もある。父親のMauricio PereiraがAndre Abujamra
(Karnak)と実験的なロック・デュオ
(Os Mulheres Negras)を結成していたという縦の繋がりも面白い(変態親子だったのか?)。全13曲・44分、デジパック仕様。6つ折り歌詞カード付き。
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- 「大洋レコード」(東京・神楽坂)で購入したアルバム(CD)を纏めてみました
- 店主が不在だったので、店番していた奥さまの写真を撮らせてもらいました^^;
- Tim BernardesとNina Beckerは〈ブラジルの秋〉からの転載(一部加筆・改稿)
- CD・DVD・LP・大洋レコードグッズ 10% OFF SALE 開催中(~12/28)
- 紹介したアルバムの多くはソールド・アウトですが、今後の再入荷に期待しましょう
- トップ画像(3枚)をランダム表示にしました(2020-02-08)
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大洋レコード
- 住所:東京都新宿区矢来町139
- 営業時間:12:00~19:00
- 定休日:毎週水曜、毎月第一・第三日曜
- メディア:CD / LP / DVD
- 店舗紹介:東京・神楽坂のセレクトCDショップです。ブラジル・アルゼンチンの現在のインディペンデントなシーンからの輸入盤CDを中心にお取り扱い。

Little Electric Chicken Heart
- Artist: Ana Frango Eletrico
- Label: Tratore Music Brasil
- Date: 2019/09/12
- Media: Audio CD
- Songs: Saudade / Promessas e Previsões / Se No Cinema / Tem Certeza? / Chocolate / Vinheta / Torturadores / Devia Ter Ficado Menos / Caspa

<atras/alem>
- Artist: O Terno
- Label: Tratore Music Brasil
- Date: 2019/06/07
- Media: Audio CD
- Songs: Tudo Que Eu Não Fiz / Pegando Leve / Eu Vou / Nada/Tudo / Pra Sempre Será / Volta e Meia / Bielzinho/Bielzinho / O Bilhete / Profundo/Superficial / Passado/Futuro / E No Final

Casas
- Artist: Rubel
- Label: Independent
- Date: 2019/03/02
- Media: Audio CD
- Songs: Intro / Colégio / Cachorro / Pinguim / Casquinha / Batuque / Mantra / Passagem / Explodir / Sapato / Chiste / Fogueira / Partilhar / Santana

Licao #1 Moacir
- Artist: Quartabe
- Label: Tratore
- Date: 2015/11/03
- Media: Audio CD
- Songs: Oduduá / Coisa #3 / Rota ∞ / Moacirsantosiana #10 / Suk-Cha / Chamada / Felipe / Coisa #8 / Nanã - Coisa #5 / Nanã Nenê / When It Rains + A Saudade Mata A Gente / Sendo #1, #4

Nocturno Mundo
- Artist: Florencia Otero
- Label: Limbo
- Date: 2015/04/20
- Media: Audio CD
- Songs: Blue / River / Down To You / I Had A King / California / Little Green / The Same Situation / A Case Of You / Woodstock / Both Sides Now / The Dry Cleaner

Acrilico
- Artist: Nina Becker
- Label: Tratore
- Date: 2017/10/13
- media Audio CD
- Songs: Acrílico / Despertador / O Seu Azul / Zebra Dálmata / Na Quebrada / Caramelo da Nostalgia / Kawaii / O Que Eu Não Sei / Grão de Sal / Olhinhos / Voo Rasante / Aperta A Minha Mão

Recomeqar
- Artist: Tim Bernardes
- Label: Tratore
- Date: 2017/09/26
- Media: AUdio CD
- Songs: Abertura (Recomeçar) / Talvez / Quis Mudar / Tanto Faz / Ela Não Vai Mais Voltar / Pouco a Pouco / Não / Era O Fim / Ela / Incalculável / Calma / As Histórias do Cinema / Recomeçar
posted by sknys at 00:11|
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