2009年12月11日

スニーズ・シンクス 2009



  • 私が一番好きなのは、『忍者月影抄』に出て来る 「忍法・埋葬虫」 で、これは裸で抱きあった男女がドリルのように回転しながら土の中にもぐり込み、敵がやって来たところを地中から刀をバッと突き上げて殺す──というもので、まったくマンガのようなものだが、性交という心身の異常状態が生み出す妙なエネルギーを感じさせて、「絵空事ならではの真実味」 とでもいうべきものがある。『忍びの卍』の 「忍法白朽葉」 あるいは 「赤朽葉」 にしても、男の生理というものがマンガ的な誇張と具体性を持って描き出されている感じがして、女の私にもなんだか身にしみて面白いのだった。風太郎忍法帖の魅力は、「体のハイテク」 とも呼ぶべきその思いつきの奇抜さばかりではなく、その1つ1つに男女の生理が強く投影されているところだと思う。そこが、凡百の 「体のハイテク小説」 と一線を画す大人っぽさなのだと思う。稚気はたっぷりあるが、けっして幼稚ではないのだ。
    中野 翠 「大きな、いい人」


  • スニンクス回文シリーズは〈板橋虫歯隊〉〈三日月もぎつかみ〉〈絵文字萌え〉〈湾岸線緩和〉の4作(40篇)をアップした。ちょっと凝りすぎのような気もするけれど、マンネリ化を回避しようとすると、どうしても回文が長くなってしまう。その代わりタイトルには気を遣いました。「絵文字萌え」はケータイ少女やアニメおたく時代の新回文。「雅子さま」などと同じく、回文だとは気づかないで使っている人も少なくないでしょう。回文には2つの愉しみがある。回文を作成している時と、そのストーリを考えている時。回文作成に費やす時間の方が遙かに長いが、どんなストーリになるかは実際に書いてみるまで分からない。日本語の文章として意味の通った美しい回文よりも、シュールな乱調回文や〈スパンコール・カンガルー・コンパス〉みたいな「三題話」の方が想像力を刺戟する分だけ面白いストーリになったりする。回文の出来不出来とストーリの面白さは必ずしも一致しないのだ。スニンクス回文は180篇に達した。2つに分割した一覧表〈PALINDEX〉や、50音順に並べ替えた〈PALINDLIST〉も活用して下さい。

    個人的な年間ベスト・アルバム10枚を遡って行く「REWIND」シリーズは、〈ウン・ディア(2008)〉〈乳出しモンチ(1996)〉〈インナー・シティ・ライフ(1995)〉〈蟹が出て来た日(1994)〉の4作を加えて、これまでに15年分・150枚(1994-2008)のアルバムを選出したことになります(20年・200枚、1991年までは巻き戻して行く予定)。毎年12月になると、国内・海外各メディアによる年末恒例のベスト・アルバムが発表される。〈スニンクス 2008〉では英The Wire誌の「2007 Rewind」を挙げたので、今回は米Spin誌の「The Best Albums Of 2009」を紹介しておきましょう。今年リアルタイムで愛聴していたアルバムはサイドバーの「FAVORITE - ALBUMS」で順次更新しています。2009年のベスト・アルバムは年明けに発表しているので多くは語りませんが、サイド欄で紹介したアルバムの中の何枚かは当然入って来るはず。まだ1度も聴いていない新譜CDが数10枚溜まっているけれど‥‥。

      Spin Magazine The Best Albums of 2009

                        *

    月刊コミック誌COM(1967-71)を1年ずつ読んで行くシリーズ「COMを読む」は無謀な企画だった。マンガ誌と雖も12冊を一気に読むのは結構疲れる。連載や連作だけではなく短篇や評論、エッセイ、コラム、投稿作品などにまで目を通すのは大変で、途中から「COMを読む」ではなく「火の鳥を読む」にタイトルを変更した方が良かったかもしれない。5回のシリーズから洩れてしまった作品については、「COMを読む・補遺」という形で紹介したいと思います。手塚治虫、石森章太郎、永島慎二の連載3本柱でスタートした「COM」も5年目に入ると編集方針も2転3転して定まらず、「火の鳥」だけが気(火?)を吐いていたという印象は歪めない。それだけ「復活編」と「羽衣編」の2作が傑出していたという証左だが、たとえ虫プロ商事が倒産しなかったとしても「COM」の前途は険しかったと言わざるを得ない。「COM」最期の年に萩尾望都と樹村みのりが2作ずつ描いていること、「ぐら・こん」(71.2)に大友克洋(16歳!)の投稿作品「海が‥」が論評されていることは記憶に留めておくべきでしょう。

    これまでの「村上ワンダーランド」にも幾つかの謎が解明されないままに残されていたけれど、『1Q84』ほど多くの謎が渦巻き、頭の中が?????‥‥で占有されることはなかった。カルト教団、リーダー、「空気さなぎ」、ドータ、パシヴァとレシヴァ、ディスレクシア、パラレル・ワールド、「2つの月」、リトル・ピープル‥‥「Book2」のラストで天吾が幻視した「空気さなぎ」の中で眠っているのが青豆のドータならば天吾=青豆、ふかえりと交わった天吾はリーダーと相似形の存在ということになってしまう。ブログや下記の評論の中には「青豆の見る2つの月が歪んでいるのは、彼女のドータが完全に目覚めてないからだ」とか、「行方不明になった後で天吾の許へ帰って来た少女は、ふかえりのドータなのではないか」という鋭い指摘もあった。『村上春樹『1Q84』をどう読むか』(河出書房新社 2009)では、35人の読み手が『1Q84』を肯定・批判的に読み解こうとしている。ミステリやSFじゃないんだから、すべての謎が論理・科学的に解明される必要は全くないけれど、物語の根幹に及ぶ決定的な疑問点(?)は「Book3」で解消して欲しいなぁ。

                        *

    毎回ブログ・トップを飾ってくれるネコちゃんたちのプロフィールを紹介している「ネコ・ログ」シリーズはネタ切れかもしれない。と言ってもネコ写真が尽きたわけではなく、ネコ紹介文の方が‥‥。150匹にもなって同じネコたちが再登場しているという事情も無視出来ないけれど、毎日一緒に暮らしている飼い猫ではないので、そんなに面白いエピソードがあるわけじゃない。村上ワールドに登場するネコのように人語を喋ってくれないし、猫語を話せるわけでもない。閑話休題。びっくり猫屋敷のオバアさんに「ネコ写真」をプレゼントしたら、お礼に大きな柿を5個貰いました。「びっくり猫屋敷の殺人」で勝手に殺しちゃってゴメンなさい。8匹も飼っていると毎月の食費が嵩むそうです。出逢ってから5年‥‥やっとイチゴちゃんの飼主と初体面しました。女飼主は「イッちゃんは大人しいネコ。ちょっと洋種が混じっているんじゃないかしら?」と言う。隣家のチビ猫に脅されると、ビックリして逃げちゃいます。

    アート関連の記事は〈ミレイドスコープ〉〈夏の終わりのトロンプ・ルイユ〉をアップ。美術展や展覧会などの観賞記は、その後で作家や流派の資料を読んだりしなければならないので、どうしても記事を書くまでにタイムラグが生じる。図録カタログなどは一切買わずにメモを取りながら見て回るために、純真に作品を愉しめない。ブログに画像をベタベタ貼るのは好きじゃないので、絵画とスニンクスとは相性が良くない‥‥などの理由から、美術展や展覧会の観賞記事は余り書きたくないというのが本音です。〈オフィーリア〉がジグソーパズルになった「Ophelia Quiz」(英Tate Online)が面白かったので、フラッシュ・ゲームを紹介して、「ミレイ・クイズ」を作ってみた。興味ある方は〈オフィーリア・クイズ〉にも挑戦してね。「奇想の王国・だまし絵展」はアルチンボルドの代表作〈ウェルトゥムヌス〉が観れただけでも感激ものだった。ちなみに記事タイトルは「夏のおわりのト短調」のモジリになっているんですが、気づいた人いるかしら?

    2009年最大の発掘・再発見は山田風太郎先生だった。『甲賀忍法帖』だけは読んでいたものの、これほどまでに「忍法帖シリーズ」が面白いとは思ってもみなかった。50年も前に書かれた小説が古びて色褪せるどころか、今もなお瑞々しく色鮮やかな光芒に包まれている。しかも忍法帖だけではなく、明治もの、室町もの、ミステリ、エッセイなど‥‥数多くの著作が残されている。これだけ書いてくれれば読者も本望でしょう。澁澤龍彦や金井美恵子が自作を褒めてくれたと、対談やインタヴューで嬉しそうに語る風太郎先生‥‥。中野翠は男女が裸で抱き合ったまま回転して地中に潜り込み、敵が真上に来た時に太刀を垂直に突き上げて串刺しにする忍法「人間ドリル」(という名称は付いていないけれど)が一番好きだと書いているし、浅生ハルミンは小学生時代、「将来何になりたいですか?」というアンケート用紙に「くノ一」と書いたそうです。風太郎忍法帖が好きな女性も少なくないらしい。これから読んでみたいという人は〈風太郎忍法帖〉を参考にしてね。

                        *

    サイドバーをプチ・リニューアル!‥‥各タイトル(見出し)の右側に過去リンクを設けました。工夫したのはリンク文字を目立たない色合い(#cccccc)にして、オンマウスの時に「SKIN SWITCHER」と連動して色が変化するようにしたこと。過去カレンダーや過去記事などがダイレクトに表示可能になったので、「CATEGORIES」「COLOR CLOUD」から辿るよりも、素速く記事にアクセス出来るようになったかと思います。まぁ、自分の使い勝手が良いようにカスタマイズしただけなんですが、参照したい一覧リストや記事を一発表示出来ないというストレスは多少軽減されたかな。特定の記事や文章の一部を探す場合は、サイドバーの「Googleブログ内検索」にキーワードを入れて下さい。「Google Search」は超強力なので、キーワードを含むスニンクスの全文章が一覧表示されます。あの文章、どの記事に書いたんだっけ?‥‥という際にも役立ってくれます。

    最近は1日の訪問者数も増えて、1000位以内(ソネ風呂内)に入っているんですが、相反するようにコメント数は少ないですね。どうやら「nice!」機能というソネ風呂独自の特殊性が関わっているようです。俗に「義理ナイス」「ナイスの押し逃げ」‥‥などと呼ばれるアイコン(リンク)を受け付けない設定にしていると、「お返しナイス」目当てのブロガーが来ることもないし、「義理コメント」も付かないわけです。ソネ風呂の場合、「nice!」と「コメント」は一蓮托生なのでしょう。もちろん、それはソネ風呂という小さな「コップの中のナイス」であって、広大なブログ世界には存在しない「妖怪」のような存在です。逆に言うとソネ風呂には「nice!」があるために、不必要な義理コメが多すぎのかもしれません。スニンクスはソネ風呂内のコメントが少ないので、相対的にゲスト・コメントが目立っている。味気ない無味乾燥なゲスト・アイコンをカスタマイズしておいて良かったなぁ。ゲストの蛇尾さん、いつもコメントありがとう。

                        *

    2009年12月1日に〈s k n y s - s y n k s〉はブログ開設4周年を迎えました。この1年間に公開した記事は60本(2008/12/1〜2009/11/21)。1ヵ月5本と少ないけれど、1つの記事が長い(約4000字前後)ので分量的には少なくないと思う。更新日は毎月1日・11日・21日の旬日を軸として、その間に6日・16日・26日を臨時増刊号風に配信する月6回(中4日は厳しい?)を目指している。〆切日を設けないと記事を書かないので、自主的に更新日を決めています。祝5周年を迎えた「So-netブログ」にも有料化の波が襲って来ました。「ストレージ容量」や「ブログ数」の増量化は兎も角、「60日間未更新の場合も広告表示なし」と「ブログのヘッダーとフッターリンク非表示可」はヘッダのカスタマイズと同じ方法で簡単に非表示化出来るんですよね。有料ブログなのに60日間も未更新というのは矛盾しているような気もしますが、ヘッダをカスタマイズし難くいように改竄した後で広告を入れ、金を出せば非表示可にしてやるというのは阿漕ではないでしょうか。〈猫にも出来る無料カスタマイズ〉という記事を書こうかな?

                        *                    *



    村上春樹『1Q84』をどう読むか

    村上春樹『1Q84』をどう読むか

    • 著者:加藤 典洋 / 安藤 礼二 / 島田 裕巳 / 四方田 犬彦 / 森 達也 / 内田 樹 / 沼野 充義
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:2009/07/22
    • メディア:単行本
    • 目次:あからさまなエンターテイメント性はなぜ導入されたか ── 桁違いのスケールの「世界文学」/ 王を殺した後に ── 近代というシステムに抗う作品『1Q84』/ これは「卵」側の小説なのか / 幻談 / 相対化される善悪 ── オウム真理教事件から14年経て辿り着いた場所 /「父」からの離脱の方位 / オーウェル、チェーホフ、ヤナーチェック ──『1Q84』をより深く楽しむための注釈集 / ねじれた都市と歴史の物語 / なぜこういう物語が展開さ...


    忍者月影抄

    忍者月影抄

    • 著者:山田 風太郎
    • 出版社:河出書房新社
    • 発売日:2005/06/04
    • メディア:文庫
    • 目次:忍法「肌文字」/ 忍法「鑞涙鬼」/ 忍法「髪飛脚」/ 忍法「埋葬虫」/ 忍法「女人花」/ 忍法「波千鳥」/ 忍法「足八本」/ 忍法「銅拍子」/ 忍法「夢若衆」/ 忍法「鏡地獄」


    s k n y s - s y n k s

    s k n y s - s y n k s

    • Author: sknys
    • Articles: 240
    • Page View: 454,419
    • Date: 2009/12/11
    • Media: Internet
    posted by sknys at 01:18| Comment(0) | TrackBack(0) | b l o g | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
    この記事へのコメント
    コメントを書く
    コチラをクリックしてください

    この記事へのトラックバック