
ナージャ・トロコンニコワ『読書と暴動』
□ 夏至、永野芽郁懲り、震えた声、堪える振り、恋目の哀しげ
俳優・田中圭との不倫疑惑を全否定した永野芽郁へのバッシングが凄まじい。かつて 「不倫は文化」 発言で顰蹙を買った俳優や不倫騒動でTVから消えた俳優やタレント、芸人も少なくない。「正義感」という錦の旗を振って糾弾する匿名者たちの誹謗・中傷はSNSの普及によって日々エスカレートしている。永野芽郁も直ちに記者会見を開いて全面謝罪しておけば、ここまで炎上することはなかったのに。企業の不祥事や政治家の失言など、初期対処の重要性を痛感する。まるでシャーリイ・ジャクスンの短篇 「くじ」(1948)みたいな因習的な公開リンチがネット上にゾンビのように転生しているかのような悍ましさである。今日では 「宝くじ」 や 「プロ野球ドラフト会議」 などで実施されているが、元来は当選者には 「神の意志」 が宿っていると考えられていた。西洋の決闘や日本の仇討ちが法的に認められていたのも、勝者は神の意志によって決まるという考えに基づく。皆川博子の『風配図』(河出書房新社 2023)には少女ヘルガと義妹アグネの母方の従兄ギースリの決闘裁判が生々しく描かれている。永野芽郁がゾンビと戦っても勝ち目はなさそうですが。
□ 私が黒猫を飼い始める日。昼飯は烏賊を捏ね、録画したわ
黒猫を飼い始めた。ある日、キッチンで昼食用のイカ墨パスタを作っている時に、ネコの大きな鳴き声が聞こえた。出窓の隙間に挟まって鳴いていたのだ。それにしても驚異的な跳躍力ではないか。甘えた猫撫で声ではなく、助けを求める悲痛な声だった。数年前にS**川沿いの遊歩道を散歩していて、桜の木に登って降りられなくなったネコを力ずくで降ろした時と同じ声色だった。人間ならば 「悲鳴」 に近いのかもしれない。恐らく主人を亡くしたホームレス・キャットか、迷子になった家ネコなのだろう。とりあえず出窓から救出して床に降ろす。人懐っこく足許に擦り寄ってくると思いきや、黒い風のように疾走して、寝室のベッドの下に潜り込んだ。少なくとも烏賊の臭いに誘惑されて、ジャンプしたわけではないらしい。イカ墨パスタ(我ながら上手く出来た)の動画を撮って、インスタにアップした。黒猫も撮りたかったけれど、気配を消して寝室から出て来る様子がない。私の家に黒猫がいるなんて、誰も気づかないはずだ。「猫はイカを食べると腰を抜かす」 というのは本当かしら?
□ この子とお飯事、男ママ・男の娘(こ)
少女ナージャは大の読書好き。両親や先生が勧める道徳・教育的な絵本や児童書は全然面白くない。大人たちが 「子供は読んじゃいけません」 という怪しく妖しい本を探し出して、密かに読んでいた。歩きながら読んでいて側溝に嵌ったり、イラストが怖くてトイレに落としたり、読書に纏わる失敗は枚挙に暇がない。ヤオイ系の小説や日本の少女マンガにも惹かれたし、ロックやポスト・パンクも大好きで聴いていたので、性的マイノリティー(LGBTQ+)の人たちにも抵抗感が全くない。ふと幼い頃に遊んでいたオママゴトを懐かしく思い出す。ナージャが娘、2人の男の子がママと姉役になって、毎日仲良く遊んでいたことを。彼女は後にフェミニスト、アナ ーキスト、反権威主義者、反プーチン・反トランプのアクティビスト(活動家)になったけれど、あの女装好きな少年、男の娘(こ)たちはトランスジェンダーだったのかしらと思う。「男の娘(こ)とは、生まれた時の生物学的性別が男性だった "トランスジェンダー" のこと」(川本直)である。
□ 今唇へ‥‥食べる備蓄米
1年前、スーパーに山積みになっていた精米が忽然と消えた。我が家では 「つや姫」(5kg)を購入しているのだが、ガラガラの米棚に一袋もないことが多く、あっても約2.5倍(¥5000)の値札で売られている。前農林水産大臣が備蓄米を放出するも、店頭には並ばず。銘柄米も品薄のままで価格も下がらない。そもそも日本米の生産量が足りないのか、足りているのかさえ消費者には皆目分からない。仲買業者が溜め込んで売り渋っているのではないかという疑念も湧く。「米は買ったことない。家に売るほどある」 と放言して更迭されたN**農水大臣に代わって就任した自称 「米担当大臣」 K**が古米・古古米・古古古米・古古古古米を安価(随意契約)で放出すると、備蓄米を販売する店頭に行列が出来て、瞬時に完売したという。やっと手に入れた古古米を早速炊飯器で炊いて食べてみた。ブランド米には多少味は劣るけれど、白米を腹一杯食べられる小確幸を噛み締める。
□ 次男、可愛い孫と今 「Coco壱番」。8位古古米と古米、違和感なし
休日に次男が可愛い孫を連れて、カレーハウス 「CoCo壱番屋」 へ行った。座席に着いてメニ ューを見る。備蓄米(古米・古古米)を使用したという 「古古壱番カレー」 という新メニューに惹かれてオーダーしてみた。新農水大臣に就任したK**のスピーディーな備蓄米放出への妬み・嫉み(やっかみ)なのか、野党議員は国会の質疑で備蓄米は 「1年たったら家畜の餌に出すようなもの」 とか 「古古古米はニワトリさんが一番食べている」(駄洒落のつもりなのか?)などと揶揄して 「米担当大臣」 の迅速な対応を腐し、消費者から顰蹙を買っている。孫と食べた 「古古壱番カレー」 はココイチの人気メニュー 「ロースカツカレー」 や 「パリパリチキンカレー」 などのライスと比較しても遜色ない味わいだった。出演者がロケ先の店舗で人気メニューベスト10を予想して注文するヴァラエティーTV番組 「帰れま10」(テレ朝系列)のナレーション 「古古壱番カレーは第8位!」 という空耳が脳裏に響いた。
□ 但馬、逆走クルマ止まる、食うぞ、具焼きました
「無くそう逆走」 というスローガンを掲げても一向に無くならない逆走車。認知機能が低下した高齢者や日本語に不慣れな外国人が一般車道や高速道路で逆走するケースが少なくない。煽り運転は悪意による犯罪だが、逆走は不注意による過失の可能性が高い。つい先日も99歳のドライヴァーが中央道を逆走して、トンネル内で対向車と正面衝突した。80歳以上の高齢者は自動車免許証を自主返納すべきではないか。取得年齢制限が18歳以上になっているように、上限も設けるべきではないかと言うと、認知機能や運転能力に問題はない高齢者もいると反論されるが、運転技術に長けた中学生だっているわけだ。国道483号を走行中に逆走車に遭遇した。危うく正面衝突しそうになったが、咄嗟にハンドルを左に切って対向車を躱した。逆走していることに気づいたのか、バックミラー越しに停止した車が遠ざかる。「湯の原温泉オートキャンプ場」 へ家族で行く途中の出来事。BBQのメイン具材は但馬牛である。
□ いかなるトラブルか?‥‥縋る、ブラ取るN**
フジTVの女性アナウンサーとのトラブルが週刊誌に暴露されて、芸能界からの引退に追い込まれた元ジャニーズ・タレント(アイドル・グループS**の元リーダー)のN**氏。そのストレスから体調を崩して休職〜入院〜退職を余儀なくされた元女子アナとは対照的に、何事もなかった(一件落着?)かのように、TV番組に出演し続けた同局の処遇にも批判が集中した。N**氏は第三者委員会の認定した 「性暴力」 という表現が気に喰わないらしく、その根拠の開示と撤回を求めて反論している。元女子アナに高額な示談金を支払い、見舞金を出していることからも、その罪咎がN**氏にあることは明らかだ。少なくともセクハラや痴漢などの範疇に留まらない、不同意猥褻や不同意性交に近い行為があったのではないかと想像される。N**氏は 「名誉回復」 を画策しているようだが、それは冤罪で死刑囚として何十年も刑務所に収監されていた人たちに贈るべき言葉である‥‥「同意のない性的な行為は、性暴力であり、重大な人権侵害です」(内閣府男女共同参画局)。
□ 奮い立つ性交、濃い接待流布
人気漫才コンビの相方M**は 「飲み会」 と称する合コンで起こしたとされる性加害(性的な行為を強要された?)の記事で、名誉を傷つけられたとして 「週刊B**」 を裁判所に提訴したが、1年近く経ってから訴えを取り下げた。「事実無根」 と豪語していた性加害疑惑の真相は藪の中である。M**が降板したTV番組のW司会をしていた国民的アイドル・グループの元リーダーN**にも他局の女性アナウンサーとの間で起こった同じようなトラブルが発覚した。示談になったとはいえ、当時トラブルの報告を受けていながら何事もなかったかのように、半年以上もN**を公然と出演させ続けたTV局の処遇にも批判が集中して、コンプライスを重視するクライアントが撤退してCMは消え、N**も引退に追い込まれた。N**の自宅で起きたという 「性暴力」 の内実は守秘義務によって有耶無耶になっている。いずれも不同意猥褻や不同意性交に近い行為があったと想像されるが、そもそも舎弟芸人やTVプロデュ ーサーが女性タレントや女子アナを接待要員として 「飲み会」 に派遣(上納?)していた悪しき慣例が是非が問われている。
□ 目先、飛鳥。若い女、美男追い、乾かず秋雨
「私は猫ストーカー」(浅生ハルミン)はエッセイ集のタイトルだが、「写真撮られるのが嫌いな猫」 にとって、猫ストーカーは迷惑な存在なのかもしれない。それでも命を狙われることはない(猫を殺傷する人間は鬼畜にも劣る犯罪者である)。別れた元恋人を執拗に追い回すストーカーによる殺人事件が後を経たない。あなたが警察に駆け込んでも救けてくれない。しかしストーカーと聞いて男だと断定するのは大いなる偏見である。私は東京から奈良県・飛鳥地方まで、イケメン元彼の後を追い駆けて来た。わが心情(心象風景)を大スクリーンに映し出したかのように、俄かに暗雲が立ち籠めて天空が暗くなり、妖しく光る稲妻と耳を擘く落雷音、そして激しい秋雨に遭った。濡れた前髪からポタポタと滴り落ちる雨水が目の中に入って、なかなか乾かないのは涙が混じっているからかもしれない。
□ ビビるフジTV 「死に体」。タモリも怠惰に痺れて渋る日々
第三者委員会がタレントN**氏と女性アナウンサーのトラブルを巡るフジTVの対処を厳しく糾弾した。視聴者からの批判、クライアントの撤退、もの言う株主の外圧によって、フジTVとフジ・メディア・ホールディングスはビビって、「死に体」(レームダック)に陥ってしまった。人権意識の低さ、女性を 「もの」 扱いする男尊女卑(社員を接待させてタレントに阿諛追従する)、性暴力(Sexual violence)や心的外傷後ストレス症(PTSD)の無知蒙昧など、国連人権理事会の普遍的定期審査(UPR)から勧告されるまでもなく、30年経っても「選択的夫婦別姓制度」 を採択出来ない旧態依然とした日本の 「家父長制」 という古い地層の腐敗した汚物のような悪臭を放つ醜い断面が露わになった。「森田一義アワー 笑っていいとも!」(フジTV)の司会を約32年間務めたタモリも未だに払拭出来ないTV局の昭和的な体質に苦り切っているのではないか?‥‥日テレのコンプライアンス違反で、無期限活動休止を発表したK**然り。
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- 回文と本文はフィクションです。一部で実名も登場しますが、該当者を故意に誹謗・中傷するものではありません。純粋な「言葉遊び」として愉しんで下さい^^;
- 『「男の娘」 たち』(河出書房新社 2024)から引用しました
- 公式サイト 「湯の原温泉オートキャンプ場」 などを参照しました
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- 著者: ナージャ・トロコンニコワ(Nadya Tolokonnikova)/ 野中 モモ(訳)/ 清水 知子(解説)
- 出版社:ソウ・スウィート・パブリッシング
- 発売日:2024/04/30
- メディア:単行本
- 目次:文化労働者としてのアーティスト──日本版のためのまえがき / イントロダクション / 海賊になれ / ドゥ・イット・ユアセルフ / 喜びを取り戻せ / 政府をびびらせろ / アート罪を犯せ / 権力の濫用を見逃すな / 簡単に諦めるな。抵抗せよ。団結せよ。 / 刑務所からの脱出 / オルタナティヴを創造せよ / ビー・ア・(ウー)マン / 最終声明:希望は絶望から生まれる

- 著者:皆川 博子
- 出版社:河出書房新社
- 発売日:2023/05/09
- メディア:単行本
- 内容:1160年5月、バルト海交易の要衝ゴットランド島。
流れ着いた難破船の積荷をめぐり、生存者であるドイツ商人と島民の間で決闘裁判が行われることとなった。重傷を負った商人の代闘に立ったのは、15歳の少女ヘルガ。義妹アグネが見守る中、裁判の幕が開き、運命が動き出す

- 著者:シャーリイ・ジャクスン(Shirley Jackson)/ 深町 眞理子(訳)
- 出版社:早川書房
- 発売日:2016/10/21
- メディア:文庫(ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 目次:酔い痴れて / 魔性の恋人 / おふくろの味 / 決闘裁判 / ヴィレッジの住人 / 魔女 / 背教者 / どうぞお先に、アルフォンズ殿 / チャールズ / 麻服の午後 / ドロシー / 祖母と水兵たち / 対話 / 伝統あるりっぱな事務所 / 人形と腹話術師 / 曖昧の七つの型 / アイルランドにきて踊れ / もちろん / 塩の柱 / 大きな靴の男たち / 歯 / ジミーからの手紙 / くじ
![私は猫ストーカー[完全版] 私は猫ストーカー[完全版]](https://m.media-amazon.com/images/I/41QGRZ8AJeL._SL160_.jpg)
- 著者:浅生 ハルミン
- 出版社:中央公論新社
- 発売日: 2013/01/23
- メディア:文庫(中公文庫 あ 74-1)
- 目次:はじめに「猫のあとをつけてみたい」/ あなたにもできる猫追いの手引き / めぼしい ”標的” を見つけるには / 猫ストーキングに適した装い / 秘伝! 猫に取り入るテクニック / これだけは守りたい猫ストーカー七戒 / 実録・猫ストーカーファイル / 井の頭公園でサバイバルな大追跡 / 夜の闇にねかしてあった猫 / ひまな私に追われたいそがしそうなキジトラ / 黒い...
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